遊びの思い出は最後は消えてしまう

度量を見せるどころか、仕事上の能力も手腕もなく、ただ、よきに計らえとか、任せるとだけいっているタイプも問題です。山本五十六元帥の有名な言葉がありますが、やはり「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」です。

図を拡大

会社というのは社交場ではありません。人間関係を円滑にすることと、仲良くすることとは違います。違うものは違う、いいものはいい、正しいものは正しいとはっきり意見をいい、お互いに切磋琢磨しながら、ひとつの目標のために、それぞれが持てる力をすべて出していく。その中で、リーダーとして意見をまとめ、引っ張っていく、そのような能力や手腕をもたなくてはなりません。

部下にいい意味でのプレッシャーをかけるときにも、単にプレッシャーをかけるだけでなく、まずは、これをこういうふうにしようという目標を立て、目標の達成にはこれが一番いいやり方ではないかと、自分でも案を出す。そこに部下たちの声を入れ、ブラッシュアップして、ひとつの目標を遂行するための絵を、部下とともに描いていくことです。

ビジネスマンとしての生活を振り返ったときに、ともに必死になって知恵を働かせて難局を乗り越えたという体験が残ることはあっても、飲みにいって、ゴルフをしてという遊びの思い出は最後は消えてしまうものです。苦難の体験が、ある年月を経て一緒に酒を飲んだときに、懐かしく思い出される。必死になったことが楽しく思い出され、お互いようやったなとたたえ合うことができる。

そのとき初めて、ほんとうにおいしい酒が飲めるのであり、苦労をともにした体験があるから、心の絆というのは生まれるのです。その心の絆こそがすなわち信頼なのです。

(プレジデント編集部=構成 大沢尚芳=撮影)