今や滅私奉公は必ずしも報われない時代

「単に仕事が多いのか、抱え込んでいるのか、見分けて手を打つ!」<br><strong>日本ガイシ社長 松下 雋</strong>●1946年生まれ。名古屋大学経済学部卒業後、同社入社。米国駐在計11年間になる。
「単に仕事が多いのか、抱え込んでいるのか、見分けて手を打つ!」
日本ガイシ社長 松下 雋●1946年生まれ。名古屋大学経済学部卒業後、同社入社。米国駐在計11年間になる。

部下が多忙でヘトヘトになっていたら、私はじっと観察し、どうしてそんなに多忙なのかその原因を探ります。昔なら酒に誘って「最近、仕事が忙しそうだが」と事情を探ることができました。そこで悩みなども話してくれたものです。

しかし、最近は無理に誘えばパワハラと言われ、私生活に立ち入ればプライバシー侵害になりかねず、腹を割って話す機会がつくりにくいのも事実です。

そういう意味では、部下が悩みを言いやすい環境をつくることも上司の重要なテクニックのひとつと言えます。

ちなみに当社では、高卒の製造系社員対象に先輩社員が新入社員の相談役となる「指導員制度」があります。指導員には毎月1万円を支給。飲み代などコミュニケーション促進に自由に使えます。

さて、部下がヘトヘトになっている理由を探った結果、部下の能力が低くて時間がかかっているとすれば、能力を向上させる方法についてアドバイスをし、どうしても適性がない場合は配置転換・異動などを考える必要もあります。

単に仕事量が多すぎて誰がやっても時間がかかるということであれば、負荷の緩和策が必要です。ただ、仕事量が多すぎとわかっていても、残念ながら予算の制約から上司が見て見ぬふりをするケースも見受けられます。そのような状態は上司自身も板挟みになっていると考えていいでしょう。むしろ、こういう状態を放っておく経営に問題があります。

しかし、部下に過剰な負荷がかかっているときこそ経営陣にきちんと物言いができる上司でありたいもの。私が部長の頃、役員からある水準の成績を挙げろと迫られました。しかし、明らかに現場に無理を強いることになるため、「できない」と突っぱねたことがあります。部下にそんな無茶はさせられないからです。