3密回避型の「産業構造転換」は全業種に波及必至だ

こうした3密回避型の産業構造転換はすでに始まっている。

外食ではモスバーガーが遠隔操作のできる音声対応ロボットを使った実証実験を始めている。デニーズは東京都内に宅配専用の厨房を開設。ネット上で受け付けた料理を、宅配事業者を通じて注文先に届けるサービスを始めている。

こうしたビジネスモデル転換の行き着く先は、これまでの職がなくなることを意味する。しかも、「職がなくなる」のはコロナの影響を直接受ける産業にとどまらない。

3密回避のビジネスの動きは当然AI(人工知能)などデジタル技術の発展を加速させる。従来指摘されていたAIの発達でなくなる仕事の時期がより早まることは間違いないだろう。

英オックスフォード大学のカール・ベネディクト・フレイとマイケル・A・オズボーンの2人がAIの進化で奪われる職種についての論文を2013年に出し、世界を驚かせたのは記憶に新しい。

人工知能を搭載した自動運転車
写真=iStock.com/hakule
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10~20年以内に米国の労働人口の47%がAIなどの機械に代替されるリスクが70%以上と発表していた。しかし、当時の日本はどこの企業も人手不足であり、AIが自分の仕事に取って代わるのはまだ先の話だと思っていた人も多かった。

しかし、コロナ危機で接客業などの接触型ビジネスや事務系や工場など定型業務の労働集約型産業から、AIや機械へのシフトや専門技能集約型労働への移行が現実味を帯びている。

コロナ前まで人出不足だった職種が、いきなりリストラ開始か

日本でも三菱総合研究所の「内外経済の中長期展望2018~2030年度」には次のような職種の労働人口の数字が出ている。

●生産・運輸・建設職や販売・サービス職など「手仕事的なタスクでルーティン業務に従事する人」:2450万人
●一般事務・営業事務・会計事務などの「分析的なタスクでルーティン業務に従事する人」:1880万人

コロナ前までは、生産・輸送・建設職や販売・サービス職は人出不足の状態にあった。それがAIなどの活用で徐々に緩和され、事務職は2020年代前半から過剰になり、2030年には120万人が過剰になる。少し遅れて生産職はIoTやロボットによる自動化で顕在化し、30年に90万人が過剰になると予測していた。

しかしコロナをきっかけにその時期が早まるだろう。