日本企業では「なぜその仕事をするのか」を問うよりも、「その仕事をどうやるか」というハウツーが重視されがちだ。企業コンサルタントの柴田昌治氏は「予定調和の価値観は高度経済成長期の日本を支えてきた。しかし、こうした文化が残る企業はこれからの時代に生き残れない」と指摘する――。
※本稿は、柴田昌治『なぜ、それでも会社は変われないのか 危機を突破する最強の「経営チーム」』(日本経済新聞出版)の一部を再編集したものです。
本質を考えられない日本人独特の思考
第二次世界大戦での敗戦後、一度はドン底にまで落ち込んだ日本です。しかし、世界も驚くほどのスピードで復興を遂げ、短期間でめざましい経済成長を遂げました。
そんな日本の高度経済成長を支えたものとして、一つ、見逃してはならない事実があります。
今まであまり取り上げられることはなかったのですが、日本人の思考パターンには、よくよく考えてみれば誰にでも覚えのある大きな特性があるのです。
それは、つねに「どうやるか」に思考が向きやすい、という特徴です。
日本のビジネス雑誌なども、よく見てみると本質を探るというよりは「どうやるか」に絞ったテーマが目につきます。書店にハウツー本が並ぶのも日本に特徴的な傾向です。そういう意味では、日本には他国に類を見ない「ハウツー」の豊かな文化がある。ハウツーの引き出しが豊富なのは、まさに日本文化の際立った特性なのです。
このことは何を意味しているのかというと、何かに取り組もうという時、その目的や意味を考えることなしに(なんとはなしにまさに空気のように)、手っ取り早く手段を手に入れて使いこなし、加工して行動するという応用の器用さと処理能力に並外れていたということです。
こうした思考の特性は、日本人の多くが当たり前のこととして共有し身につけている、という点が注目すべきところです。ドン底からの復興というわかりやすい目標のもとでは、四の五の考えず、がむしゃらに頑張りさえすれば結果がついてきたのです。困窮の状況から立ち上がっていく経済の成長局面では、この処理能力の高さが大きな役割を果たした、ということです。