子どもへのマネー教育は、どうやって始めればいいのか。元外資系投資銀行トレーダーで投資家の池澤摩耶さんは「トレーディングカードは株の売買感覚を育てる実践の場と言える。子どもたちは遊びを通じて、モノの価値を見極める体験ができる」という――。(第2回)

※本稿は、池澤摩耶『子どもを人生ゲームの勝者にする最強マネー教育』(光文社)の一部を再編集したものです。

ポケモンカードで遊ぶ人
ポケモンカード(写真=Japan tokyo shibuya/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

ポケモンカードは経済の入門として最高の教材

自分で資産が増やせるマネーリテラシーを身につけさせよう。私がそうしたメッセージを発信すると、「子どもに投資なんてできるとは思えない」「株とはなにかもわからないのに」といった疑問や不安の声が、よく返ってきます。

しかし、実は投資や株についての正確な知識はなくても、経済活動に必要な「モノには価値がある」「価値は変動する」という感覚が、すでに身についている子どもは少なくありません。

それは、家庭や学校、地域の人間関係や遊びのなかで、自然に身につく感覚です。お金をあまり触ることのない小学生ぐらいの子どもであっても、投資に必要な素地はすでにできあがっていることがあります。

どんな遊びで? と思いますよね。

実はそれは、みなさんも日常的によく見る「トレーディングカード」です。

「今このイーブイ、人気出てきて価値上がってるって!」

ポケモンカード(通称ポケカ)で遊んでいる子どもたちから、そんな声を聞いたこと、ありませんか?

一見ただの遊びのようだけれど、実はこれ、立派な“経済の入門編”。

そう、子どもたちはすでに「トレーディングカード」という仕組みを通して、「モノの価値」や「資産性」、「その価値の変動」を、毎日のように体感しているのです。

子どもの間で行われているのは「株式市場」

たとえば、

「このピカチュウ、限定版だから取っておいたほうがいいかも」
「ギラティナとアルセウスなら、こっちがちょっと得かも」

といったような会話が自然と飛び交う。

「ルギアと交換しよ?」
「いいけど、それだけじゃ足りないから、もう一枚つけて!」

こんなやりとり、もう立派な“交渉”です。

市場での人気やレア度によって価値が上下するカードたち。これはまさに、株式や投資と同じ仕組み。カードの価値は日々変わり、数千円から、時には数万円、数十万円の値がつく“激レア”カードも登場します。

「このカード、来月の大会で注目されるかも」なんて予想を立てて取引するその感覚。これこそが、未来の価値を読む=投資の視点です。

そして、何よりおもしろいのが、子どもたちがカードを手にして交渉しはじめた瞬間。

「これとそれ、交換しよ?」
「いや、オリジンパルキアとセットじゃないと無理!」

そうやって自然と“価値”を見極めている子どもたちは、まさにマーケット感覚をフル稼働させている、小さな投資家たち。

トレカが飛び交う子どもの遊び場は“ミニ株式市場”なのかもしれません。