子どもへのマネー教育は、いつから、どのようなことを教えればいいのか。元外資系投資銀行トレーダーで投資家の池澤摩耶さんは「家庭でのマネー教育は、早ければ早いほど効果的だ。子どもと一緒にスーパーに行って、相場観を少しづつ育てていくといい」という――。(第1回)

※本稿は、池澤摩耶『子どもを人生ゲームの勝者にする最強マネー教育』(光文社)の一部を再編集したものです。

学業への投資のイメージ、EDUCATIONと書かれた瓶に入った硬貨
写真=iStock.com/Wachirapong Sukkasemsakorn
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日本と欧米で全く違う「お金の話」の考え方

「人前でお金の話はしない」という感覚。日本ではごく自然なマナーのように思えますが、実はこれ、世界的にはかなりレアな価値観なんです。

私が学生時代を過ごしたイギリスやカナダ、社会人として働いていたアメリカでは、社交の場で経済や政治、投資の話をするのはごく当たり前。むしろ「世界情勢をふまえて投資を語れるのは、大人としてのたしなみだよね」という空気すらあるほどです。

もちろん、ハイブランドのバッグや高級車を持っているとか、自分の持つ資産がどれだけ増えたか……といったような自慢話はしない! あくまで、情報を交換し合いながら、お金のセンスや判断力を磨いていく。そんな“建設的な会話”が、ごく自然に日常に溶け込んでいるんです。

欧米では、大人の社交場だけでなく、子どもたちの教育現場でも“お金のセンス”を育てる機会がしっかり用意されています。

北米では多くの高校で「パーソナルファイナンス」や「経済学」の授業があり、株や債券といった投資の基本に加え、リスクやリターンといった実践的な視点も学びます。

さらに、アメリカやイギリスでは、課外活動として「投資クラブ」がある高校も。生徒たちは株式市場の動向を読み解き、バーチャル投資を通して経済感覚を磨いていきます。ここで積んだ実績は、大学出願時のアピール材料として評価されることも少なくありません。

子どもにとって最強のマネー教育とは

娘がカナダの公立小学校に通っていたとき、“Classroom Economy”という名の投資シミュレーション授業を経験しました。

子どもたちはそれぞれ教室内での役割を持ち、2週間ごとに“報酬”として仮想通貨のようなお金を受け取ります。そのお金を使って「買い物をする」「投資をする」「土地の権利を購入する」など、まるで人生ゲームのような選択をしていくのです。

娘も、友達と作戦を練ったり競い合ったりしながら、土地を買い足したり投資で増やしたり。“自分でお金を動かす楽しさ”を、遊びながら体感しました。

こうした体験から見えてくるのは、“お金を語るのが日常”な国と“タブー視する”日本の、意識のギャップです。世界では、小学生から経済を“素養”として育てているのに対し、日本はいまだに立ち遅れているのが現実。

たしかに日本でも、2022年から高校での金融教育が必修化されました。でも、それはまだやっと第一歩を踏み出したばかり。だからこそ、もっと早く、もっと身近なところからスタートすべきなんです。

親である私たちが“お金を語る空気”を家庭に持ち込むこと。それが、子どもたちにとって一番リアルで、最強のマネー教育になります。