※本稿は、髙橋洋一『増税とインフレの真実』(秀和システム)の一部を再編集したものです。
年金は、長生きするほどお得にできている
大前提として、年金は長生きしないともらえない。
老後、誰もが年金をもらえるわけではなく、もらうためには長生きするのが前提なのだ。
そして、平均的な年齢以上に長生きする人というのは、実は同世代の半分しかいないのである。
あまり長生きできない人は、ただ年金保険料を払うばかりになってしまう。もらわずじまいである。
そういう側面から見れば、たしかに年金とは酷な制度なのだ。しかし多くの人はそれを知らず、歳を重ねれば年金がもらえると思っている。受給が始まるのは、原則65歳なのだから、ある程度までは長生きしないともらえない。
年金は「死亡保険と真逆の保険」
年金とは、いわば長生きできたらもらえる保険である。
死亡保険とは真逆の保険と考えたら、分かりやすいかもしれない。
死亡保険は、死んだときにもらえる保険だ。生きている人全員で死亡保険の保険料を払って、亡くなった人にそれをあげるという保険である。残された家族などが、亡くなった人の代わりにそれを受け取ることになる。
年金は、成人した日本国民全員が保険料を支払い、長生きした人だけがそこからお金を受け取れる保険ということだ。
80歳まで生きた場合と、100歳まで生きた場合を比べると、もらえる金額には大きな差が出る。早くに死んでしまえば年金はちょっとしかもらえないし、1年でも2年でも長く生きれば、それだけ多くもらえるのだ。
健康であるほど得であり、早く死んでしまうのは絶対的に損なのである。
計算してみよう。
もし100歳まで生きたとしたら、受け取れるのはだいたい給料の50%くらいの額になるので、
となる。保険料として支払った額より、受け取る年金の額の方がずっと多いことが分かるだろう。
年金というのは、このくらい単純な原理で設計されているから、なかなか間違えないし、破綻しにくいという性質を持っている。
人が働ける年数と平均寿命の2つが分かっていれば、人がいくつぐらいまで働き、どのくらいの給料になるか分かるので、平均的にどのくらい年金を支給しなければならないかを簡単に計算できる。
シンプルな制度だからこそ、破綻させるのは難しいのである。