なぜ人種差別はなくならないのか。投資家の金武偉氏は「人種差別は『無知と自己奉仕バイアス』による認知的飛躍から起こる。ある人種に対して差別意識を持っている人は現地の友人を1人でも作るといい」という——。
中国・武漢発のコロナウイルス流行に伴う人種差別的事件への反動として、活動家が主催した中国人との連帯のフラッシュモブ。看板には「ストップ・ザ・パニック」と書かれている=2020年2月5日、イタリア・ナポリ
写真=EPA/時事通信フォト
中国・武漢発のコロナウイルス流行に伴う人種差別的事件への反動として行われた、活動家が主催した中国人との連帯を示すフラッシュモブ。看板には「ストップ・ザ・パニック」と書かれている=2020年2月5日、イタリア・ナポリ

差別意識とはヒトの無知につけこむ心理現象

筆者はプレジデントオンラインにて、昨年9月に「反日・嫌韓に走る人々の滑稽ぶり」を遺伝子科学の視点から指摘し、今年3月には「区別ならぬ差別を見極める基準」について米国最高裁判例を引用して解説した。それを受けて、今月、国内大学からオンライン講演の依頼をいただいた。テーマは「新型コロナが、なぜ世界的人種差別につながってしまったのか」だった。

たしかに、新型コロナの感染拡大がはじまり、コロナ禍の人種差別に触れたエピソードを日々の報道で見聞きする機会は増えたという実感がある。

それでも筆者は、新型コロナが新たな差別主義者を生んだ、とは思っていない。差別意識は、ヒトの無知に虎視眈々とつけこむ心理現象として、常に渦巻いているものだ。新型コロナは、その差別意識が対外的に露呈するのを誘発したトリガーにすぎない。

本稿では、新型コロナを機会に改めて、人種差別の実態とその解決法について意見を述べる。