沈黙は自爆
差別意識の実態は、他人種への無知に虎視眈々とつけこむ心理現象だ。そもそもわれわれ全員がアフリカにルーツをもつのだが、自己奉仕バイアスは目前の事実と科学をシャットアウトし、「その人種全員憎し」という認知的飛躍をあっさり受容してしまう。新型コロナは「差別意識」を「差別行為」に誘導したにすぎず、今後もあらゆる局面で人種差別は発生する。
「(人種差別への)沈黙は共犯と同じ」と米動画配信大手ネットフリックスが投稿して有名になったが、コロナ禍の欧米にて日本人も例外なく差別されているこの地球において、もはや「沈黙は自爆」に近い。
この沈黙を破る手段はたくさんある。「無知×自己奉仕バイアス+トリガー=人種差別自爆」の方程式を逆手にとればいい。
まずはわれわれとわれわれの子孫を、他人種・他国民への無知から解放しよう。苦手意識の強い国や国民があるなら、その国出身の友人を、たった一人でいいのでつくってみてほしい。当初あった苦手意識(認知的飛躍)が大きく是正されるに違いない。
次に、自己奉仕バイアスの存在を受け入れよう。何かの節で特定の国民や人種全員が憎く感じたとき、「個性」を無視して「人種」で他人をくくりたくなる自分のご都合主義を疑いたい。ヘイト思想や差別が黙認される社会では、巡り巡って自分や子孫をも被害者にすることを新型コロナが証明した。上述のRule 68にならい、差別的バイアスの代償を人為的に可視化する立法政策も検討に値するだろう。
自己防衛のためにプラットフォーマーを裁けるか
テロから疫病そして震災まで、なにが人種差別のトリガーを引くかはわからない。それでも、人種差別の広がりに対して、公共メディアには大きな責任がある。
いまFacebookは、黒人人権運動への武力行使を煽動するトランプ大統領の投稿を黙認したとして、強烈なボイコットと社内批判、そして世論批判を受けている。今後、特定の人種・民族・国民に対し明らかに偏見や敵対心を煽るコンテンツを容認するプラットフォーマーを、われわれは自己防衛(「トリガー」沈静化)のために裁くべきだ。
新型コロナによるパンデミックは、ワクチンと治療薬の合わせ技で、来年以降必ずコントロールされ、収斂してゆくとされる。しかし次に地球規模の危機が訪れたとき、また今回のように人種間での分断が起きるのか、それとも脅威に対して人種を越えて共闘できるのか。それは、われわれのうち何人が沈黙を破れるかにかかっている。