コロナ禍で明らかになる豪中対立

オーストラリアが中国との対立姿勢を鮮明にしている。6月11日、オーストラリアのモリソン首相が「中国の脅しには屈しない」と述べたと報じられた。

今年4月、豪とEUが主導で新型コロナウイルスに関する国際調査を受け入れるよう中国に求めると豪中関係は悪化、中国は「制裁」とばかりに豪牛肉の輸入を制限し、豪小麦には80%超という高い関税をかけた。政治的な軋轢あつれきが生じると経済で報復するのは中国の常套手段で、日本も2010年、尖閣沖漁船衝突事件後、レアアースの対日輸出を規制するという報復を受けた。経済面での相互依存を外交的手段に使う中国の手法が、今回も使われているのである。

シドニーのオペラハウス前に、カラフルに彩られた兵馬俑が並ぶ
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さらに6月5日、中国文化観光省は「オーストラリアでコロナによる人種差別的な発言や暴力行為が増加している」ことを理由に、中国人旅行客に対しオーストラリア旅行を自粛するよう呼びかけた。もちろんこれは自粛という体裁だが、事実上、中国当局による「渡航禁止」通達に等しい。新型コロナ禍においてそもそもの旅行客が激減している中では影響は限定的だろうが、重要なのは中国当局の意思によって人民に指示を出し、相手国の経済にいかようにも打撃を与えられる、という札を見せつけていることだ。

これにも前例がある。2016年、韓国がTHAAD(終末高高度防衛)ミサイル配備を決めると、以降、韓国を訪れる中国人観光客は激減した。2017年3月には中国当局が旅行会社に対し韓国旅行商品を販売しないよう通達したとの指摘もあり、同年に韓国を訪れた中国人観光客数は前年の半分程度まで減少したという。