中国の戦略は長期的には成功しない

中国の手法は相手国に短期的な打撃を与えるという面では功を奏している。だが、長期的には中国離れを招いてもいる。2010年のレアアース禁輸で、日本は脱レアアースを進め対中依存度を低下させることに成功。韓国も中国人観光客依存を低下させる努力を強いられながら、全体的な観光客数は回復傾向にある。

中国の戦略がいつでも成功するわけではないことは確かだが、これまで中国は資源や安い人件費、何より「13億人の中国市場」というニンジンを各国の市場の目の前にぶら下げておき、政治的な問題が起きればそのニンジンを取り上げると脅して自国への批判を封じようとしてきた。もちろん「政治とはそういうもの」と言ってしまえばそれまでだが、そうした中国の手口はよくよく知っておく必要があるだろう。

中国「国家安全法」採択非難声明に豪も参加。これは決して当然ではない

今回のオーストラリアに対する制裁・報復も、中国の動機は新型コロナに関する国際調査への反発だけではないだろう。オーストラリアは中国が5月末に全人代で採択した「国家安全法」に対する共同非難声明に参加している。「自由のとりでとして繁栄してきた香港の自由を脅かすことになる」とするこの共同非難声明にはオーストラリアの他、アメリカ、イギリス、カナダが参加。いわゆるファイブアイズと言われるUKUSA協定締結国の5カ国のうち、ニュージーランドを除く4カ国が名を連ねたことになる。

こう書くとオーストラリアがこの非難声明に参加するのは当然のことのように思えるが、実はオーストラリアが米国同盟側に踏みとどまったことは、オーストラリアの事情を知る人々にとって、実はほっと胸をなでおろすような事実でもある。