GDPのマイナス成長、貸倒に備えた与信費用が増加
新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、各国で隔離や都市封鎖、そして企業活動自粛が求められ、リーマン・ショック時を上回る世界経済の後退が懸念されています。IMF(国際通貨基金)が今年4月に公表した世界経済の成長率予測によると、2020年の実質GDP成長率は全世界でマイナス3.0%、先進国・地域ではマイナス6.1%、そして日本ではマイナス5.2%が見込まれています。コロナ関連の国内倒産件数は中小・零細企業を中心に約150件にのぼり、今後もどれだけ増加するのか先行きは不透明です。
このような厳しい環境下で国内3大メガバンクが発表した2020年3月期決算では、みずほフィナンシャルグループを除き減益となりました。傘下銀行の評価損、与信費用の積み増しが主な要因です。各社の進行期(2021年3月期)の業績予想によると、メガバンク3社の与信関連費用は1兆円を超える水準となる見込みです。三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)並びに三井住友フィナンシャルグループ(以下、SMFG)はそれぞれ4,500億円、みずほフィナンシャルグループ(以下、みずほFG)では2,000億円の与信関連費用を想定、各社2020年3月に対して21年は減益予想となっています。
地銀グループおいては、今回のコロナ禍における各社対応が分かれています。ふくおかフィナンシャルグループは、新型コロナウイルス感染拡大による景気悪化を見越し、2020年3月期連結決算に倒産に備える貸倒引当金など563億円を19年3月期に対し追加計上。逆に、千葉銀行では影響額の合理的な算定が困難として、与信費用は19年3月よりも18億円減少する結果となっています。
与信費用は将来に対する予防的な見積費用であるため、合理的な範囲において、必ずしも積み増す必要はありませんが、今後何らかの形での業績への影響は避けられないでしょう。