なぜ日本は新型コロナウイルス対策の初動が遅れたのか。日本経済新聞社編集委員の滝田洋一氏は、「判断をWHOに一任したのがよくなかった。WHOは新型肺炎への緊急事態宣言に際し、もともとの感染源である中国ではなく、日本の成田空港の写真を使っていた。一体どんな神経をしているのか」という――。
※本稿は、滝田洋一『コロナクライシス』(日経プレミアシリーズ)の一部を再編集したものです。
「緊急事態」の認定とともに添えられたのは…
WHOのテドロス事務局長の立ち居振る舞いは目を覆わんばかりだった。「日本経済新聞」の「大機小機」欄(2月6日)には「WHOのガバナンス改革」と題して、こう記した。
世界保健機関(WHO)は1月30日、中国発の新型肺炎を、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」と認定した。決定文を載せたWHOのホームページには、大きな写真が添えられている。
空港の建物からマスク姿の人が多数出てくる光景で、春節の旅行客だと察しがつく。
建物にはハングルの表示。韓国かと思いきや、写真の左端に視線を転じわが目を疑った。NTTとおぼしき緑色の公衆電話があったからだ。これは日本の空港ではないか。
調べると、写真映像代理店ゲッティイメージズが1月24日に配信した写真である。説明には成田国際空港とある。
春節の旅行客が新型肺炎の感染を世界に広めたのは否めない。それにしても新型肺炎への緊急事態宣言に際し、もともとの感染源である中国以外の国の写真を載せるとは。
WHOという機関は一体どんな神経をしているのだろう。WHOは1月22~23日に開いた会合では緊急事態の宣言を見送った。中国が見送りを求めて圧力をかけた。仏紙「ルモンド」はそう伝える。友好国と組み声高に反対したのだ。
1週間を空費する間にも、感染は一段と広まった。ようやく緊急事態を宣言した際の記者会見でも、テドロス事務局長は中国への忖度に終始した。中国の措置を称賛する耳を疑うばかりの発言。中国との渡航・貿易制限に反対するとともに、感染を広めた中国を免責しようとする意図が透けてみえる。
テドロス氏はエチオピアの元保健相で元外相。そのエチオピアは中国から巨額の援助と投資を受け、借金の棒引きも施されている。WHO自体も中国のカネとヒトの影響下にあり、それが判断の遅れにつながったとの見方は多い。
そればかりでない。新型肺炎のリスクについて、WHOは1月25日まで「中国は非常に高い、周辺地域では高い、世界的には中程度(モデレート)」との判断を示してきた。だが26日になり、22日以降の世界的なリスクは「高い」だったと修正した。事務的な誤りと釈明したが、耳を疑う言い回しである。
企業活動や経済運営の前提は世の中の公衆衛生が保たれていることだ。WHOはそのための機関のはずだが、芯からむしばまれているとの疑いが募る。日本は米国などとともにWHOのガバナンス改革に取り組むべきだ。
空港の建物からマスク姿の人が多数出てくる光景で、春節の旅行客だと察しがつく。
建物にはハングルの表示。韓国かと思いきや、写真の左端に視線を転じわが目を疑った。NTTとおぼしき緑色の公衆電話があったからだ。これは日本の空港ではないか。
調べると、写真映像代理店ゲッティイメージズが1月24日に配信した写真である。説明には成田国際空港とある。
春節の旅行客が新型肺炎の感染を世界に広めたのは否めない。それにしても新型肺炎への緊急事態宣言に際し、もともとの感染源である中国以外の国の写真を載せるとは。
WHOという機関は一体どんな神経をしているのだろう。WHOは1月22~23日に開いた会合では緊急事態の宣言を見送った。中国が見送りを求めて圧力をかけた。仏紙「ルモンド」はそう伝える。友好国と組み声高に反対したのだ。
1週間を空費する間にも、感染は一段と広まった。ようやく緊急事態を宣言した際の記者会見でも、テドロス事務局長は中国への忖度に終始した。中国の措置を称賛する耳を疑うばかりの発言。中国との渡航・貿易制限に反対するとともに、感染を広めた中国を免責しようとする意図が透けてみえる。
テドロス氏はエチオピアの元保健相で元外相。そのエチオピアは中国から巨額の援助と投資を受け、借金の棒引きも施されている。WHO自体も中国のカネとヒトの影響下にあり、それが判断の遅れにつながったとの見方は多い。
そればかりでない。新型肺炎のリスクについて、WHOは1月25日まで「中国は非常に高い、周辺地域では高い、世界的には中程度(モデレート)」との判断を示してきた。だが26日になり、22日以降の世界的なリスクは「高い」だったと修正した。事務的な誤りと釈明したが、耳を疑う言い回しである。
企業活動や経済運営の前提は世の中の公衆衛生が保たれていることだ。WHOはそのための機関のはずだが、芯からむしばまれているとの疑いが募る。日本は米国などとともにWHOのガバナンス改革に取り組むべきだ。