まるで危機感のない橋本岳厚労副大臣のツイート

ここで有事モードと平時モードの落差となる。一例を挙げよう。橋本岳厚労副大臣、その人である。厚労省で大臣に次ぐ地位にある橋本氏は、こうツイートしている。

「WHOは、現時点においては、新型コロナウイルス関連肺炎の発生状況が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC:Public Health……」(1月23日)。

途中で途切れているが、WHOの声明文を引いて緊急事態には当たらない、とのお墨付きとしている。

これから春節で中国からの旅行客がどっと押し寄せてくるのに、それじゃダメだ。目の前が真っ暗になるような気持ちだった。その時点の副大臣のツイッターはこんな具合だったからだ。

「現時点の国内の感染者は引き続き1名(既に軽快)です。一般のインフルエンザ等も流行っていますので、手洗いはマメに、マスクもどうぞ」(1月23日)
「インフルエンザも流行っています。手洗い、マスクなどにご留意ください」(同)

橋本龍太郎元首相の子息である岳副大臣は、父と同じ厚労族の議員。新型コロナと一般のインフルエンザを同列に扱っているように読める文面からは、危機感が伝わってこない。ご本人の性格もあろうが、1月下旬時点の厚労省の空気を素直に映しているのだろう。

シンガポールや香港は入国禁止措置をとったにもかかわらず…

橋本副大臣ばかりでない。1月下旬、与野党の閣僚経験者との会合に出席した際のことである。

「新型肺炎で中国は武漢を封鎖しようとしている。日本の防疫体制はこんなんでいいんですか。水際措置などといっても、2009年の新型インフルエンザのときは、役に立たなかったではないですか」。そんな感想をぶつけると、いかにも気乗り薄な答えが返ってきた。

「患者はまだ1人か2人でしょう」

滝田洋一『コロナクライシス』(日本経済新聞出版)
滝田洋一『コロナクライシス』(日本経済新聞出版)

春節を控えて、中国からの渡航制限を求める声もないではなかった。国際的にみて極論ではなかったことは、シンガポールや香港がとった中国からの入国(入境)禁止措置をみても分かる。香港の場合は、中国の操り人形と言われた林鄭月娥行政長官が、いち早く緊急事態を宣言し、入境停止措置をとったのが印象的である。

03年のSARS流行の際に多くの犠牲者を出したことが、香港市民の記憶に刻まれていたからだろう。それに引き換え日本はSARSでの被害を免れたおかげで、今回の新型肺炎もやり過ごせると考えているように思えてならなかった。WBSでは「中国や香港は有事モード、それに対して日本は平時モード」「新型肺炎は中国の習近平政権を揺さぶりつつあるが、対岸の火事と油断していると安倍政権の足元も揺らぎかねない」とコメントした。