日本とはケタ違いの新型コロナ感染者数が出ている欧州各国では、全体の死者数の50%前後が介護施設にいる高齢者となっている。一方、日本は14%にとどまっている。介護の現場を取材している相沢光一氏は「日本の介護施設が以前から行っている感染防止策が功を奏したのではないか」という――。

欧州ではコロナ死の50%前後が介護施設の高齢入所者だった

今も世界で感染拡大を続けている新型コロナウイルス。AFP通信が発表した統計では6月1日時点で約611万人が感染し、死亡者は37万人を超えました。

これといった自粛措置がとられていないブラジルなどは1日に2万人近くが感染し、600人以上が亡くなっており、正確な統計がとれていない国も少なくないため、これよりもはるかに多い感染者、死亡者がいるのは確実です。

各国の研究機関も新型コロナウイルス関連の統計調査を行っていますが、注目したいのは「国全体の死者数」に対する「高齢者施設の死者数」の割合です。

英国ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの研究グループが4月12日に発表した調査結果(※)によれば、スペインが57%、イタリアは53%と高齢者施設の死者が国全体の死者の半数を超えており、フランス、ベルギーも40%台と半数に迫る死亡率になっています。

https://ltccovid.org/wp-content/uploads/2020/04/Mortality-associated-with-COVID-12-April-4.pdf

日本国内のコロナ感染による死者の14%が介護施設入所者

この調査の対象に日本は含まれていないので、単純な比較はできませんが、日本の場合、国全体の死者数も他国よりも低く抑えられているだけでなく、高齢者施設での死亡率は約14%だったと、共同通信が5月13日に報じています(5月8日時点、新型コロナウイルスに感染した人の国内の死者は全体で557人。そのうち、介護施設入所者の死者数は79人で、全体の約14%=7人に1人)。

各国に比べ低い水準を保っている理由は何でしょうか。首都圏のある市でケアマネを務めているKさんは「それには介護職員の涙ぐましい努力があるんです」と語ります。