下水の飛沫が割れ目から……

新型コロナウイルスで混乱する日本。政府は不要不急の外出を控えるよう呼びかけているが、室内でも気を付けるべきことがある。2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)が流行した当時、香港の高層マンション「アモイガーデン」でSARSの集団感染が発生、10日間の隔離命令が出された。英BBCによると、329人が感染し、42人も死亡した。特筆すべきは、感染が疑われる入院患者の約半数が1つの棟(E棟)の各階7号室・8号室に住んでいたことだ。

SARSの集団感染が集中したアモイガーデンE棟(33階建て、香港)。問題の排水構造は、日本のマンションと基本的に変わらない。
SARSの集団感染が集中したアモイガーデンE棟(33階建て、香港)。問題の排水構造は、日本のマンションと基本的に変わらない。(時事通信フォト=写真)

そのときの状況を事例として紹介している、横浜市健康福祉局衛生研究所感染症・疫学情報課の記事(同市ホームページ内)によると、E棟の各階の7号室と8号室は、下水管でそれぞれ垂直につながっており、下水管への入り口である排水口にはU字形の排水トラップが設置されていた。

排水トラップは下水からの臭気・虫などの侵入を防ぐためのものだが、長期間の不在などでU字の底部分にたまっていた水が蒸発すると、下水から臭気や虫などが侵入することもある。

患者が7号室と8号室に多く発生したことは、患者の便によってそれらの部屋の下水管が病原体(SARSコロナウイルス)で汚染され、そのウイルスを含んだ下水の小さな飛沫が、空気とともにバスルームの床から侵入したためと考えられている。バスルームの換気扇は吹き抜け部分につながっているため、そこを通じて他の部屋にもウイルスが拡散した可能性もある。