コロナ禍の雇用不安で万年人手不足の介護業界の求人に注目が集まっている。ただ、介護の仕事には「ハードワークのわりに給料が低い」といったネガティブなイメージもつきまとう。現実はどうなのか。首都圏近郊で働くケアマネジャーに聞いた――。
老女の手
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コロナ禍の雇用不安で「介護業界」転職希望者が増加している

厚生労働省は7月2日に「新型コロナウイルス感染拡大に関連する解雇や雇い止めにあった人は7月1日時点で3万1710人に達した」と発表しました。

また、総務省が6月30日に公表した5月の労働力調査によれば、失業予備軍ともいえる休業者は423万人に達しました。コロナ禍による経済停滞は旅行・宿泊業、飲食業、製造業など多くの業種を直撃し、未曽有の雇用不安が起こっています。

当然、介護業界もコロナ禍の影響を受けました。

デイサービスやショートステイといった通所介護事業所には利用自粛によって経営が成り立たなくなったところが少なくない。介護職員も免疫力が落ちた高齢者と接するうえ「3密」が避けられない労働環境で、感染防止に神経をすり減らす日々を送っている。

ただし、この業界に「雇用不安」はありません。

もともと慢性的な人手不足状態。サービスに対するニーズがなくなることはないし、職員の給与の原資の大部分は介護保険料を主とした国の福祉財源だからです。そうしたこともあり、今、求職者の働き口として注目されつつあるという。

介護施設に人材派遣会社から問い合わせ電話が相次ぐ

「私が所属する社会福祉法人は、老人保健施設とデイサービスの事業を行っているんですが、6月に入った頃から人材派遣会社から頻繁に問い合わせの電話がかかるようになりました」

そう語るのは、首都圏近郊の自治体でケアマネジャーを務めるYさんです。他の介護施設でも似たような問い合わせが相次いでいるようです。

問い合わせの目的は、いうまでもなく自社に登録された人材の派遣先確保です。

「電話を受ける事務職員に聞いたところ、人材派遣会社からこれほど多くの電話がかかるのは2008年に起きたリーマン・ショックの時以来だと言っていました。人材派遣会社にとって、通常時はさまざまな業種からの求人案件を預かっていて、優先順位の低い介護業界まで手がなかなかまわらなかった。でも、今はコロナ禍で求人先が減ったのでしょう。それで、うちのような介護施設にも電話をかけてくるようになったのだと思います」

介護業界は慢性的な人手不足。公的施設の特別養護老人ホーム、老人保健施設、ケアハウス、民間施設の有料老人ホーム、サービス付き高齢者住宅、通所介護のデイサービス、ショートステイなど、多くの施設や事業所が人材を求めています。コロナ禍で雇用不安が続く現在、門戸を開いているのが介護業界なのです。