55歳の長男は30代後半から働けずに家にひきこもっている。82歳の父親はなんとか就業させたいと焦るが、コロナ禍で立ち直りの機会を失った。息子はこのままで大丈夫なのか。ファイナンシャルプランナーに相談すると、その回答は意外にも「55歳ですし、無理して働かなくてもいい」だった——。
整えられていないベッドの手前に扇風機
写真=iStock.com/brazzo
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コロナ禍で55歳のひきこもりの息子を抱える80代の親が……

新型コロナは、ひきこもりの家族にも大きな影響を与えています。

ひきこもりは以前から自宅にこもっているのだから関係ないのではと思いきや、そうではありません。それまでは日中はひきこもりの子どもだけが家で過ごしていたのが、親が在宅勤務になり、顔を合わせる機会が増えた結果、お互いにイライラして衝突することが多くなったケースがあります。

また、感染の恐怖や自粛による社会情勢の変化などのニュースに接して、精神的に不安定になる子どもも少なくありません。

ひきこもりのための居場所として開催されていたフリースペースや就労支援のためのプログラムなどが相次いで閉鎖や中止になり、立ち直りかけの機会を失うという状況も起きています。今回相談を受けたのも、そんな家族でした。

30代の頃から家に閉じこもるようになった

相談に来たのは82歳になる父親です。長男がひきこもりのため、親亡き後の生活を心配していました。長男はすでに55歳になっており、父親は長男の就業を焦っているようです。

【家族構成と家計・資産状況】
収入

・父親:82歳(年金生活) 年収280万円
・母親:80歳(年金生活) 年収95万円
・長男:55歳(無職)
資産
・預貯金:2300万円
・自宅:戸建て持ち家
支出
・家族3人で社会保険料、住居費、保険料などを除いて月額20万円

長男がひきこもりになったのは30代のことでした。それまでも何度か転職を繰り返していましたが、次の就職先を見つけるまでの期間が徐々に長くなり、いつの間にか仕事どころか、外出も避けるようになってしまいました。

両親は、なんとか本人が社会復帰できるようにと、いろいろと努力をしてきました。しかし、当時は自治体などのひきこもりの支援は30代前半までとなっており、30代後半になるとほとんど支援がありませんでした。