コミュ力と相手を思いやる気持ちの強い人に向いている

つぎに仕事内容に対する不安です。高齢者を相手にする仕事が勤まるか、やりがいを感じられるかといった点です。

「これは人にもよるので、なんともいえません。でも、どんな仕事でもそうではないでしょうか。自分に向いた仕事だと思って就職したら全然合っていなかったということはよくある。介護職も同じです。やってみなければ合っているかどうかは分からないんです。ただ、私から見て確かに言えることがあります。それは、介護職はコミュニケーション能力と相手を思いやる気持ちがあれば十分務まるということです。このふたつがあれば、入所者・利用者さんとも施設のスタッフともいい関係が築けますし、職務もまっとうできる」
「やりがいを感じることも多いです。自分が行ったことに対して入所者さんが笑顔を見せてくれたり、ありがとうと言ってくれたりした時は、うれしいですしモチベーションが上がりますからね。介護の仕事に対してそういう受け止め方ができるかどうかは、やってみなければ分からないんです」

たとえば飲食業をやっていて「お客さんがおいしいと言ってくれた時がうれしい」と思える人なら介護職でもやりがいを感じられるのではないか、とYさんは言います。

食事の準備をする介護者
写真=iStock.com/byryo
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資格取得のサポートあり、待遇施設長クラスの年収は500万円

そして、3つめのハードル、給料と待遇面です。

「この点に関しては、世間で言われているように他の業種に比べて決して良いとは言えません。とくに無資格の人は介護助手という扱いになる。ほとんどの施設・事業者が非正規雇用で給与も時給で支払われることになるはずです。時給は1000円を超えるかどうかでしょう。月収でも20万円はいきません。他の仕事から転職した人は、きついと感じるはずです」

ただし、先に述べた介護職員初任者研修の資格を取れば待遇は良くなる、と言います。

「施設側としても、この資格を取ってくれれば戦力として計算できるわけですから、うれしいわけです。だから、無資格の職員が資格を取る意志を示せば協力してくれるし、その費用を補助してくれるケースもあります」

初任者研修は、かつての「ホームヘルパー2級」にあたる介護職の入門資格ですが、個人で取得するとなると、結構大変です。約90時間の実技、約40時間の座学、合計130時間のカリキュラムを修了する必要があり、専門のスクールに通わなければなりません。

全カリキュラム修了には最短でも約1カ月かかりますし、修了後には知識を習得しているかをチェックする試験もある(ただし授業を聞いていれば誰でも合格する内容で難易度は高くない)。また、スクールの受講料5万円から高いところでは10万円近くかかるところもあります。

しかし、施設や事業所によっては、スクールに通う時間的、金銭的サポートをしてくれるところがあるというのです。

「だから、無資格であっても施設の求人に応募して、まずは働いてみる。そして、介護の仕事が自分に合っているか、やりがいを感じられるかを自問し、違和感なく続けられそうだったら初任者研修の資格を取るという考え方でいいと思います。場合によっては、資格取得のサポートもしてくれるわけですから。実際、そのプロセスで介護職を一生の仕事にしている人もたくさんいます」
「先ほどリーマン・ショックの後、ウチの施設に人材派遣会社から求人の問い合わせがあった話をしましたが、当時、介護業界に入った人が多かった。その中には介護職に水が合い、今では施設長クラスになっている人も少なくありませんからね。本人のやる気次第では給料も上がっていくし、介護を一生の仕事にすることもできます」

公益財団法人介護労働安定センターが2018年8月に発表した「2017年度介護労働実態調査」によると、2017年度の施設の管理者の平均月給は35万6679円(労働者は22万7275円)、平均賞与は70万9230円(労働者は57万2079円)で、年収は約500万円(労働者は約330万円)でした。