「新型コロナ感染者が出た」埼玉の介護施設はどう対処したのか
「ついにうちの施設の職員に新型コロナ感染者が出てしまいました」
8月上旬、埼玉県の社会福祉法人に勤務するケアマネジャーのHさんから筆者のもとに緊急連絡が入った。その声は緊張し、深刻な事態であることをうかがわせた。
Hさんが所属する法人では、高齢者がリハビリのために入所する老人保健施設を運営しており、その施設を利用した通所介護(デイサービス/入浴のほか、書道、陶芸、生け花、リズム体操などのプログラムを実施)も行っている。
高齢者は新型コロナウイルスに感染すると重症化する可能性が高い。「だから、施設にはウイルスを絶対に持ち込んではいけないと、職員は徹底した感染予防策をとっています」と語っていたのがH氏だった。
しかし、新型コロナの感染力は、その固い防御網も突破してしまったのだ。
「感染者を出してしまった以上、課題は入所者・利用者の方々への感染リスクを減らすことと、クラスター化を防ぐことに移りました」(Hさん)
その施設では発生した危機にどのように対応したのか。介護施設の実情も含め、一部始終をHさんに報告してもらった。
「施設に衝撃が走ったのは、ある職員から夜8時に施設にかかってきた電話がきっかけでした。電話の中身は『家族に熱を出した者がいて、心配になってPCR検査を受けてもらったところ新型コロナ陽性だった。今のところ自分は熱も高くないし体調も問題はないが、明日から出勤を見合わせたい』というものでした」とHさん。
その一報はすぐに理事長や施設長など法人の上層部に伝えられ、話し合いの結果、該当職員の出勤見合わせだけでなく、翌日から通所サービスの営業自粛が決定した。
「連絡してきた職員は、その時点では検査を受けておらず陽性者と決まったわけではありませんが、濃厚接触者であり、感染のリスクがあることは確か。施設では高齢の入所者に感染が広がりクラスター化することはなんとしても避けなければなりませんから、この決定は妥当だったと思います」