クラスター化を防止した、介護施設の機転と連携

翌日、Hさんをはじめ職員は通常通り出勤。施設長から起こった事態と当面、通所介護サービスの営業を自粛することが伝えられた。

加えて、濃厚接触者の職員はその日のうちに検査を受け、数日後に結果が出ること、その職員と会話を交わすなど濃厚接触した職員は名乗り出ること、そして検査結果が陽性と出たら、濃厚接触者が検査を受ける手はずをとることが発表された。

また、各利用者にはそれぞれの担当者が電話で事実を伝え、一定期間、通所サービスを休止すること、その間、不便が生じることがあったら代替の対応をすることなどを連絡するように、という指示された。

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、自己隔離を行う高齢女性
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Hさんにとっても身近な存在でコロナ感染者が発生したのは初めてのこと。動揺しなかったのだろうか。

「施設長の話を聞いた時は、やはりショックを受けました。自分も感染しているかもしれないと不安になりました。それ以上に大変だと思ったのが施設のその後の対処でしたが、営業自粛の決定やその後の対応については冷静に受け止められました。なぜなら、ウチの施設では新型コロナが感染拡大し始めた3月頃から起こり得るさまざまな事態を想定し、どう対応するか、会議を繰り返してきたからです。そのシミュレーションでは、少しでも感染リスクが生じたら営業を自粛することは想定されていましたから、とくに慌てることはありませんでした」

該当職員の検査結果はその3日後に出ました。施設の全員が恐れていた陽性でした。濃厚接触の職員たちはすぐさま検査を受け、その結果、全員が陰性だったので、ひと安心という結果に。Hさんは濃厚接触者ではありませんでした。

「利用者さんに電話で施設職員の感染を伝える時、どんな反応が返ってくるか心配でした。報道では、感染者を出したところは偏見の目で見られ、経営が続けられないといった事態もあると聞いていました。『あなたのところは、もう利用しない』と言われるのではないかと思ったのです」

ところが、多くの利用者は、冷静に受け止めてくれた。

「それどころか感染した職員を気遣う言葉をくれた方も少なくありませんでした」