「保健所から連絡がきた時は背筋がゾーッとしました」。昨年末、訪問介護先でコロナ感染者が出たことで濃厚接触者となった男性ケアマネ。PCR検査の結果は陰性だったが、その後も「自宅内でマスクをしてくれない利用者さんが多く、いつもビクビクしている」という。さらに訪問介護者はコロナワクチン優先接種対象外になっており、介護崩壊はいつ起きてもおかしくない――。
マスクを着用した男女
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訪問介護のケアマネに保健所から電話「あなたは濃厚接触者です」

男性ケアマネジャーSさんは、埼玉県のある市で介護の仕事をしている。

「昨年の暮れ、担当する利用者さん(Mさん・80代女性)のお宅を訪問しました。ケアプランの見直しについて話し合うためです。その2日後、保健所から電話がありましてね。『Mさんの息子さん(50代)が新型コロナに感染しました。息子さんから濃厚接触者に該当する人はいないか聞き取りをしたところ、あなたの名前が出てきたので、PCR検査を受けてください』と言われたんです」

その報を聞いた瞬間、Sさんの頭には訪問時のシーンが浮かんだそうです。

「テーブルをはさんで正面にMさん、息子さんはその隣に座って約30分間、話をしました。Mさんはマスクをしていましたが、息子さんはしていなかったんです。斜め横にいた息子さんとの距離は1メートルもありませんでした」

濃厚接触者の定義は、患者が発症する2日前から1メートル程度の距離で、マスクをせずに15分以上会話した場合です。とくに陽性者側がマスクしているかどうかが重要なポイントになるそうです。Sさんのケースはまさにこの条件に当てはまります。

「訪問時のシーンを思い出した瞬間、背筋がゾーッとしました」

介護サービスを利用する側にマスク着用の意識が薄い人が多い

SさんはすぐにPCR検査を受けました。結果は幸いにも陰性。しかし、保健所からは2週間の自宅待機、業務自粛を告げられたそうです。

「感染拡大が続く今、外出時はほぼ100%の人がマスクをするようになっていますよね。でも在宅時は違う。息苦しいですし、他人の目がない安心感もあるんでしょう。マスクをしない方が少なくないんです」

埼玉県は最初に緊急事態宣言が出されたように昨年の暮れ頃から1日の新規感染者が300人を超える状態が続いています。感染すると重症化しやすいといわれる高齢者を相手にする介護関係者の危機感は増すばかりですが、当の介護サービス利用者側にその意識が薄い人が多いといいます。

「お宅に訪問するたびに感じるのが、感染防止の意識の温度差です。なかには自宅でもマスクをしている方もいます。家族同士ではしなくても私たちや宅配の人など、つまり第三者が訪問した時はマナーとしてマスクをつける方もいる。でも、多くの方は“自宅にいれば感染するわけがない”と思っているのか無防備状態。マスクをすることに考えが及ばない感じなんです。われわれが接する高齢者の方はとくにね」