お願いしても高齢の介護利用者はマスクをしてくれない

こうした自らを律する生活以外でも、職員の負担になっていることがあるそうです。

「介護職は女性が多いのですが、そのなかには学齢期のお子さんを持っている方も少なくありません。コロナ禍では学校が休校になりました。在宅することになった子どもの面倒を見なければならないということで休まざるを得ない人も多く、残った職員はその分も働かなければならなくなったんです。そのため施設、居宅を問わずスタッフは疲弊しきっています」

加えて精神的な負担となる事態も起こっているといいます。

「医療関係者が偏見の目で見られるようになったという報道がありましたよね。感染のリスクが高いということで。介護職員も同様で“あの家の家族には近づくな”などと差別的な発言をされたこともあるそうです」

また、居宅介護ではサービス事業者を悩ませていることがあると言います。それは、利用者の感染リスクに対する意識の低さです。

「私が所属する居宅介護支援事業所には4月の上旬に“アベノマスク”を呼ばれる例の布マスクが届きました。これは高齢の利用者さん用です。私たちケアマネ、サービス事業者はもちろんマスクをしていますが、利用者の方にもマスクを着用してもらい感染リスクを軽減しようというものです。でも、自宅にいる時は誰だってマスクはしませんよね。私たちが行った時はマスクをしていただきたいのですが、してくれない方が多いんです。認知症の方はもちろんですし、そうでない方もマスクをすることを忘れている。こちらから『マスクをしてください』とは言いづらいですし、結局、マスクなしの利用者の方と接することになるんです。要介護の利用者さんはステイホームだから感染している可能性が低いと思われるかもしれませんが、家族から感染する可能性はあるわけです。家族は外出しますし、私たちほど感染に神経質でもないですから、利用者さんが感染者になる危険が排除できないんです」

介護職員の頑張りが介護崩壊を食い止め、医療崩壊も防いでいる

一般の人とは比べものにならないほど感染防止に神経を使っている介護職員。人手不足から仕事の負担は増えて疲弊。周囲からは偏見の目で見られる。その状況を利用者の多くは理解してくれず、感染のリスクにおびえることもあるのです。

Kさんは最後にこう訴えます。

「こうした2重、3重のつらさを感じながら日々を送っているのが介護職員。その頑張りが介護崩壊を食い止め、ひいては医療崩壊も防ぐことにもなっている。そうした結果が(コロナ死亡者に占める)高齢者施設入所者の率が14%という低い数値に表れていると思います。話題になることはありませんが、現場では介護職員のそんな地道な努力があることを知っていただきたいですね」

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