日本の介護施設が以前から行っている感染防止策が功を奏した

緊急事態宣言が解除され、「マスク着用」や「ソーシャルディスタンス」などを守りながらも徐々に以前の日常を取り戻しつつありますが、介護現場では今も決して気を緩めることなく徹底した感染防止策が行われていると言います。

「世間ではソーシャルディスタンスという言葉が定着したように相手との距離をとることが求められましたが、介護現場ではそんなことをしたら仕事になりません。施設クラスター(集団感染)が確認では密閉回避のため換気に気を遣っていますが、密集と密接は避けられませんし、居宅介護では密閉と密接の2密状態です。常に感染の危険にさらされているんです」

5月21日現在、国内では約250件のクラスター(集団感染)が確認されており、そのうち高齢者施設での発生は約40件。サービスの形態や環境を考えれば、よく踏みとどまっているといえるでしょう。これにも介護職員の努力の成果が表れているとKさんは言います。

「もともと介護職員は感染症にはかなり注意を払っています。接するのは免疫力が落ちている高齢者ですから、インフルエンザやノロウイルスなどの感染症を持ち込んではいけないという意識が強く、今、ほとんどの方がするようになったマスクの着用、手洗いの励行は以前からしていました。それに加え、新型コロナウイルスの感染が拡大してからはその何倍もの神経を使って感染防止に努めるようになりました。入所者の方は基本的に常に施設に居ますから、感染源になる可能性は低い。気をつけなければならないのは職員がウイルスを持ち込むことで、職員は自分を厳しく律する必要があるんです」

「手を触ったりしたところはすぐに消毒する」

そう言ってKさんは特別養護老人ホームに勤務する親しい女性介護職員の日常を語ってくれました。

祖母
写真=iStock.com/Nayomiee
※写真はイメージです

「朝は検温から始まります。その職員はクルマで通勤しているのですが、ハンドルをはじめ手が触れる部分は常に消毒するようにしているそうです。そして施設に着いたら入口のところで再度検温。平熱であることを確認すると手はもちろん服や靴にも消毒液を吹きかけます。なお、その施設では職員の導線を明確にするため出入りは自動ドアのある1カ所だけと決められているそうです。そして始業。ケアは密接せざるを得ませんし、よそよそしい態度をとるわけにもいきませんから以前同じように行いますが、換気に気を配ったり、手を触ったりしたところはすぐに消毒するそうです」

「多くの施設と同様、そこでも家族の面会は禁止になりました。入所者の方にとっては、これが精神的にきついそうです。毎週のように面会に来られるご家族もいて、入所者はそれを生きがいにしていたりする。それを禁じられるのはつらく元気がなくなる人も多い。そこで、その施設ではiPadでご家族とテレビ電話による通話ができるようにしたそうです。顔を見て話ができるだけで気持ちは全然違いますからね。家族と連絡をとって、いつ電話をしたらいいか調整する。そういう仕事も増えたのです」

「仕事が終われば自宅へ直帰。寄るところがあるとすれば食材を買うスーパーぐらいで、そこでも買い物客や店員とは距離をとるようにしている。そういう生活を今も続けているといいます」