中国共産党を揺るがすスクープを連発し、中国版の「文春砲」ともいわれるネットメディアがある。北京在住ジャーナリストの宮崎紀秀氏は「『人民監督網』は調査報道によって次々とスキャンダルを暴いている。その中には『47人の愛人を囲う』という官僚もいた」という――。

※本稿は、宮崎紀秀『習近平vs.中国人』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

「人民監督網」HP
「人民監督網」HPより

中国でネット流出した性行為の隠し撮り映像

2012年11月、習近平が中国共産党のトップである総書記に新たに選出された。ちょうどその頃──。ある中年男の性行為を隠し撮りした映像が、中国のインターネットに流れた。

カメラのレンズは、ベッドに仰向けに横たわる女性の頭の右、枕元から左後方の天井に向けて設置してあったのだろう。髪の生え際が後退し、顎に贅肉をたるませた男が女性にのしかかり、せっせとピストン運動を繰り返す腰の動きまで、はっきり映っている。

その男の首には、下から伸びた女性の白く細い腕、だらしなくゆるんだ胴には、肉付きの良い太ももが、艶めかしく絡みついている。横たわる女性の顔は見えないが、男の動きに応じて首を持ち上げた時に、豊かな長い髪が映った。

一方、男の顔は、ほぼ女性の視線と同じ位置から仰ぎ見るカメラがばっちり捉えていた。恍惚の表情を浮かべ、果てて女性の上に倒れ込むまでである。その後には、欲望を満足させた男が、身を起こし自ら陰部を紙で拭う様子まではっきり映っていた。

男の名は、雷政富。重慶市の区の1つ、人口73万人を抱える北碚区で、共産党委員会の書記を務めていた。

この区で党のトップである。相手は、ある企業家があてがったとされる女性だった。この暴露をきっかけに紀律検査委員会は、雷の身辺調査に乗り出し、雷は収賄の疑いで立件された。