心の様相が変わると見え方が180度変わる

ダイキンに入社してから60年余の過程で、いくつかのターニングポイントがありました。そのひとつでも欠けると、私がここにいることはありません。

ダイキン工業取締役会長 井上礼之氏
ダイキン工業取締役会長 井上礼之氏

最初の分岐点をあげるなら、入社2年目のとき。10日間ほど無断欠勤したことがあります。そのまま会社に戻ることがなかったら、ダイキンでのその後はなかったということです。

はじめての配属先は、淀川製作所の総務課庶務係でした。希望していた営業でなかったこともあって、モチベーションは上がりません。加えて仕事らしい仕事も与えられず、唯一任されたガリ版刷りの仕事も面白くない。職場の雰囲気になじめずに工場内を回ったり、守衛さんのところに行ったりして時間をつぶしていました。そして、ある朝、会社に届けも出さずに休むことにしたのです。そのときは、会社を辞めるつもりでいました。

無断欠勤して8日が経ったころ、同じ大学の1年先輩の方が心配して私を訪ねてきました。そして、「会社を辞めてどうするの? 次に働く場所は? その勇気はあるのか?」。先輩の言葉に自問自答してみると、何もない自分に気づきました。特別なスキルを持っているわけでもなく、こういう仕事がしたいという強い思いもない。ただ嫌で辞めたいと思った自分がいただけでした。