社長就任時、年上役員の全員を続投させた理由
分岐点をもうひとつあげるなら、その社長就任です。化学担当役員のときもそうでしたが、社長就任も私にとっては青天の霹靂。私の上には11人の年上役員がいたからです。さらに、主力事業の空調事業には1度も携わったことがなかった。そんな状況で記者発表の日程が決まってからというもの、生まれて初めて足が地につかないくらい緊張が続きましたね。記者会見の当日、何を話したのかさえ覚えていません。
社長となった私の課題は、まさに主力事業の立て直しでした。思い切った役員陣の刷新も考えられるところではありましたが、私は逆に、先輩役員の知識と経験を活かすときで、それこそが最善の方法だと考えました。17年ぶりの赤字に危機感を持ち、役員陣が派閥争いなどの後ろ向きの考えをやめ、心の様相が変われば必ずや力を発揮してくれると信じたのです。
結果は、1年で黒字転換に成功。先輩役員の方々は、私が社長を務めた8年のうち7年、私や組織を支えてくれることになりました。グローバル企業となった今のダイキンの基礎をつくってくれたといっていいでしょう。
(構成=洗川俊一 撮影=福森クニヒロ)