これからビジネスマンはどう変わるべきか。「プレジデント」(2018年4月30日号)では、特集「いる社員、いらない社員」で、大企業のトップ29人に「人材論」を聞いた。今回は、ダイキン工業取締役会長兼グローバルグループ代表の井上礼之執行役員のインタビューをお届けしよう――。

空調事業世界一ダイキン工業の外国人社員率は82%

2017年末時点で、売上高に占める海外比率は77%、従業員数に占める外国人比率は82%。連結子会社の90%は海外子会社で、事業展開国数は150カ国。空調事業で世界No.1企業のダイキン工業は、いまや多国籍企業といえるほどに世界中で地域に密着し、事業成長を続けている。真のグローバル企業が求める人材とは?

──急激なグローバル化とともに、求める人材も変わってきましたか?

グローバル化だからといって、私たちの求める人材が大きく変わってきているというわけではありません。私たちが昔から変わらずに求めてきたのは、次のような人材です。未知の世界や仕事に好奇心やバイタリティが刺激される人、過去の事例にとらわれず豊かな感性で発想できる人、失敗を恐れず挑戦し、失敗から学んで前進するチャレンジ精神を持つ人、強力なコンペティターに打ち勝つ強さ、逞しさを持つ人。そういった資質は、グローバル化によってこれまで以上に能力が発揮できるのではないかと考えています。

ダイキン工業取締役会長兼グローバルグループ代表執行役員 井上礼之氏

これらに加えて、ここ数年重視してきているのは、変化に柔軟に対応できる人やイノベーションを起こせる人ですね。情報革命というパラダイムシフトの時代には欠かせない資質になってきています。

それから、すぐに身につくものではありませんが、将来的には全体最適を考えられる人に成長してほしいと思っています。

――全体最適とは、広い視野でものごとを捉えるということですか?

任された仕事、部門、事業に一生懸命になればなるほど、どうしても視野が狭くなり、部分最適を考えるようになります。部分最適だけでなく、全体最適から見た部分最適を考える。たとえば、自部門の技術や設備への投資を考えるときには、意識して会社全体を見渡して、本当に最適な投資であるかを見極めることが重要です。

――ここまでグローバル化が進むと、必然的に活躍の場は海外ということになるのでしょうか?

海外も含めたグループ内での人材交流は活発に行われています。現在、日本から約500人が出向や研修で、海外に赴任しています。当社の場合、海外勤務は当たり前。

日本だけでなく、ヨーロッパ、アメリカ、中国などの現場を知ることは、現地の実情を肌で感じたり、消費者のニーズに直接触れたりすることで視野が広がり、全体最適を意識することに繋がると考えています。