必要なのは「アクティブシンキング」
――越智社長は年頭の挨拶で2018年を「科学技術のめざましい進歩により新たな価値が創造され、市場や人々の暮らしが抜本的に、かつ不可逆的に変化する」と予想されました。必要とされる能力や資質とは何でしょう。
職種によって異なります。経営陣はなんといっても深い洞察力。研究者は多方面に興味を持ち、自分の専門以外からもヒントを見つけてくる好奇心。製造や生産技術に携わる人は経験に裏打ちされたプロフェッショナリズム。このあたりは昔もいまも変わりません。
ただ、事務系総合職の従業員には、以前と違う働き方を要求しています。かつては会社が「右向け右」と号令をかけたら一斉に右を向き、全員で同じベクトルに向かっていくことが求められていました。だから、言われたとおりに企画、販売や管理などをきちんとこなすことが大事だったのです。でも、それでは激しい変化に対応できません。必要なのは、1人ひとりが頭を活性化させ柔軟に考えられること、つまり、アクティブシンキングです。
――それができる組織に変わりつつあるということですか。
若手には元気がよくて頭が柔らかい人材が多いので、かなりできていると思います。問題は40代から上の男性従業員。彼らは右肩上がりの時代の、一糸乱れず業務に邁進することが無条件に良いという価値観に適応し、その考え方や仕事の仕方が染みついてしまっているため、なかなか変われないのです。
――若手のロールモデルとなるべき世代がいちばん遅れているということですね。
だから、入社当初は元気がよくても、上がそうだと、年を追うごとに柔軟さがなくなってくるということも起こる。ダイバーシティが進まない原因にもなっています。
会社は女性の採用比率を増やし、テレワークや育児・介護休職制度など、環境整備にも力を入れているのに、上司が部下の女性社員を、取引先との接待に無理に同行させるようなことをしていたら、どうしても女性が働きにくい職場にならざるをえません。上司世代にとっては、夜のつきあいが当たり前でも、女性はそうは考えない。「なんで接待が必要なんですか。仕事の話は昼間にすべきです」というのが彼女たちの感覚なのです。
40代以上には、これまでの貴重な経験を下の世代に伝えるという大事な役目もあります。そのためにも、アクティブシンキングができるようになってほしいのです。