これからビジネスマンはどう変わるべきか。「プレジデント」(2018年4月30日号)では、特集「いる社員、いらない社員」で、大企業のトップ29人に「人材論」を聞いた。今回は、旭化成の小堀秀毅代表取締役社長のインタビューをお届けしよう――。

2016年の社長就任時、10年後(25年)にあるべき姿として、小堀秀毅社長がテーマの1つに掲げたのが、「経営戦略と人財戦略の連動」。特に力を注いでいるのが、「マネジメント人財」「高度なプロフェッショナル人財」の育成・強化だ。

「私も社内の打ち合わせで『小堀さん』と呼ばれます」

――旭化成は、どんなカルチャーを持つ会社ですか?

自由闊達で風通しのよい会社です。従業員同士は「さん」づけで呼び合い、私も社内の打ち合わせ等で「小堀さん」と呼ばれます。また、フランクに意見交換ができるので、現場がのびのびと強さを発揮でき、トップの指示を待つことなく、現場が判断して仕事を遂行する風土があります。もっとも、混沌とした時代ですから「現場任せ」とばかり言っていられません。IoT、AI、ビッグデータなど、最新テクノロジーが融合することで、新たな成長領域が生まれています。製造業のこだわりを持ちながら、サービス、ソリューションにも目を向けなければいけません。経営側が明確なビジョンを示すことが不可欠です。同時に、その経営戦略・事業戦略に対応できる人財を確保・育成する必要があります。

旭化成 代表取締役社長 小堀秀毅氏

――新たなビジネスチャンスを生かすために必要な人財とは。

リーダーシップとマネジメント力に長ける人間、そして高度でプロフェッショナルな人間です。マネジメント力を持つ人間がしっかり組織目標を掲げ、専門家集団を束ね、事業戦略に沿って目標を達成していく。そうした構造を築きたいのです。

――マネジャーの育成で工夫している点はありますか。

マネジメント力の強化は、経営トップから取り組む必要があります。そのため現在、経営層がコーチングを受けています。私の場合なら、二十数名の直属の部下から360度評価をもらっています。実名では本音が届きませんので、回答は匿名です。「新たな経営方針を打ち出すときは、もっとわかりやすく、シンプルに」「対話の時間をより多くとってほしい」など、率直な意見が寄せられています。

360度評価を受ける層を、次は事業本部長や若手役員まで対象を広げ、最終的には事業部長クラスまで実施していこうと考えています。また、将来のマネジメントを担う候補者を、私だけの評価で引き上げるのではなく、経営会議メンバーや事業本部長クラスのメンバーで協議しながらリストアップしています。求めているのは、大きな「構想力」でビジョンを描けること、そして「決断力」「実行力」があること。現在、課長層まで広げて候補を選出し、様々な事業を経験できるよう、意識的なジョブ・ローテーションを図っていきます。複数の上司に仕えることも、いい経験になるでしょう。