「我々の一番の味方は顧客なんです」と社内を説得
――高度なプロフェッショナル集団はどのように育成していくのですか。
03年から「高度専門職」制度を導入していましたが、17年、この中身を構造的に改定しました。従来、高度専門職と位置づけられていた多くは、部課長クラスです。そこから昇進・出世を目指すとなると、マネジメント力が要求される事業部長や役員という道しかありませんでした。そこで、専門領域を極めるという選択肢もあることを示すため、課長待遇、部長待遇、事業部長待遇、役員待遇を制度として導入したのです。また、これまでは「実績重視型」で高度専門職を認定していました。しかし、それだとハードルが高く、人数が絞られてしまう。だから「期待重視型」にして、若い人を登用しやすくしたのです。求めるのは、強い「探究心」「着眼力」「実現力」。
弊社は、「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」という3領域を中核に事業展開をしています。その中からコア技術領域を選び、それぞれ世界ナンバーワンとなるために、どんな技術的な知見と人格が必要か、そこに当てはまる人間は誰か――、そうした視点から各領域に「人事育成委員会」を設け、ポテンシャルのある人財を技術系、事務系ともにリストアップしています。領域ごとにプロフェッショナルを育成すれば、“多様な人財”がそろいます。
――小堀社長は、どのような経験が自身を成長させたと思われますか。
いくつかの新規事業にかかわり、チャレンジしてきたことです。よき理解者である上司にも恵まれました。
新規事業の場合、製品が安定しないケースもあります。すると、クレームが入ることもあるので、それらに対処するには社内の関係部署とのリレーションがすごく重要です。工場地区の技術者に、自宅で風呂に入るような時間でも携帯に電話をして会社に戻ってもらったり、顧客をサポートするために、顧客のそばに寝泊まりして24時間チェック体制をつくってもらったり。当然、社内からも私に対してクレームが出てくる。そんなときは「我々の一番の味方は顧客なんです」と社内を説得しました。「事業を大きく育てたい」――、それだけがモチベーションだったのです。関係部署が結局は協力してくれたのも、同じ思いがあったからでしょう。また、私の業務は用途開発、顧客開発が中心でしたから、常に将来への変化・動向に対しアンテナを張っていました。VTRが出始めれば、その中身を調べて、樹脂を活用できないかを模索する。FAX、コピー機、一世を風靡した家庭用ゲーム機なども中身を調べ、樹脂化できる部分はないかを検討したのです。