中堅・準大手のゼネコン(総合建設会社)が、住宅メーカーに買収されるケースが相次いでいる。これまでゼネコンは、住宅メーカーを「プレハブ屋」として格下に扱ってきた。ゼネコン各社の業績は決して悪くない。それにもかかわらず「格下」の傘下に入ることを選んだのは、なぜなのか――。

住宅大手が中堅ゼネコンを飲み込む

11月1日、パナソニックは中堅ゼネコンの松村組を買収すると発表した。10月に完全子会社化したパナホームと連携し、戸建て住宅に加えて、中高層マンション販売にも乗り出す。パナソニックは住宅分野を自動車部材分野と並ぶ「成長領域」と位置づけており、その強化が狙いだ。

パナソニックは家電やキッチン、トイレなどの住宅設備を一括して販売する「家まるごと」戦略を展開している。これをマンションにも広げることで、さらなる成長を目指す。住宅事業を手がけるパナホームの売上高は業界7位。中高層マンション販売を増やすことで、大和ハウス工業、積水ハウスに次ぐ3位を狙う。

11月9日には、住宅メーカー大手の住友林業が準大手ゼネコンの熊谷組と資本・業務提携すると発表した。熊谷組は住友林業から約346億円(発行済み株式の20%)の出資を受け、11月下旬には住友林業の持ち分法適用会社となった。

熊谷組は来年創業120周年を迎える土木の名門だ。かつては黒部ダム(富山県立山町)のトンネル工事を手がけたことでも名高い。その名門が「格下」である住宅メーカーの傘下に入ったことは業界にも衝撃を広げた。

熊谷組の業績は決して悪くない。2017年3月期の純利益は164億円。4年前の13年3月期は10億円の赤字だったが、以降は着実に利益を増やしている。直近の17年4~9月期も純利益は60億円の黒字だった。しかし東京五輪後の建設需要の冷え込みに対する危機感は強い。熊谷組の樋口靖社長は「縮小均衡に向かうことも考えられ、単独での成長加速は難しい」と懸念を隠さない。

一方、住友林業の売上高は業界4位。木質系戸建て住宅に強みをもつが、国内住宅市場は先細りが予想され、新たな事業展開が不可欠だ。会見で市川晃社長は「今後の成長には住宅、建設、都市開発でグローバルな事業展開が欠かせない」と話し、資本・業務提携について「ゼネコン機能の強化は不可欠だ」と力説した。

両社は18年3月までに具体的なロードマップを策定するとしており、バイオマス発電所の受注など再生エネルギー分野や海外での開発事業の強化にシナジー効果を期待する。