相次ぐ住宅再編は「冬の時代」の到来
住宅業界に再編風が吹き込んでいる。トヨタ自動車グループの住宅事業会社、トヨタホームは1月、老舗住宅大手のミサワホームへの出資比率を引き上げ、子会社とした。これに続き、パナソニックは連結住宅事業子会社のパナホームを8月に完全子会社化する。
国内住宅市場は大量の「空き家」問題が顕在化するなど長期的に先細りが避けられない。半面、大手10社によるシェアは1割程度に過ぎず、市場参加者が過剰な「レッドオーシャン」状態にある。相次ぐ再編は、縮む市場と淘汰が避けられない「冬の時代」の先取りといえそうだ。
トヨタホームはミサワの子会社化に当たり、約110億円を投じて株式公開買い付け(TOB)と第三者割当増資を実施し、持ち株比率を51%に引き上げた。ミサワは経営危機から産業再生機構の支援を受けた後、2005年にトヨタ自動車グループが資本参加し、直近でトヨタホームが27.8%の株式を持つ筆頭株主となっていた。この間、資材調達や人材交流での協力はあったにしろ、業界内では「目立ったシナジー効果は引き出せていない」との評が専らだった。
資本参加から10年以上を経て子会社化に踏み切った理由は、市場が縮む将来への“備え”の色合いが濃い。ミサワが子会社化に際し、国内の住宅市場は今後縮小が避けられず、「各社の統合もいずれは避けられない」と開示したコメントが、それを端的に物語った。トヨタにとって住宅事業は、創業家の家訓「一代一業」に則り、豊田章一郎名誉会長がほぼ40年前に立ち上げた事業だけに一歩も引くことはできない。その意味で、トヨタの住宅事業を集約したトヨタホームは、ミサワとの協業化を一段と加速し、盤石な事業基盤を築くねらいがにじみ出る。