静岡県伊東市の新しい市長が決まった。田久保眞紀前市長が「東洋大学卒業」と学歴詐称した問題をめぐり、失職したことに伴う選挙だった。元東洋大学研究助手で、神戸学院大学の鈴木洋仁准教授は「田久保氏が選挙後に投稿したSNSのコメントに注目が集まっている。ここに、半年以上にわたる『田久保劇場』の理由が込められているのではないか」という――。
静岡県伊東市長選が告示され、第一声を上げる田久保真紀氏=2025年12月7日午後、伊東市
写真提供=共同通信社
静岡県伊東市長選が告示され、第一声を上げる田久保真紀氏=2025年12月7日午後、伊東市

「マスコミが押し寄せた為…」

12月15日に投開票された伊東市長選挙は、9人が立候補し、元市議会議員の杉本憲也氏が当選した。前市長の田久保氏は3位にとどまった。メディアだけはなく、そして、伊東市民に限らず、彼女がどのような敗戦の弁を語るのか、注目していた。

しかし、田久保氏は、まったく応じなかった。杉本氏の当選が確実になった15日の23時すぎから5時間ほど過ぎた、翌16日午前4時すぎに、Xに次のようなコメントを寄せている。

みなさま。

本当にたくさんのご声援、ご支援、ありがとうございました!

これだけの逆境の中でも私を信じて支えてくれたみなさんの想いに感謝しかありません。

今回の選挙戦で繋がったみなさんとの絆はいつまでも私の宝物です。

自宅の周辺にマスコミが押し寄せた為、選挙後のコメントを取りやめざるを得ませんでしたが、この後からの動画配信だけではなく、改めてまたみなさんとお話出来る場を作りたいと思っています。

この後の予定についてはまったくの未定です。

何か決まりましたら、またお知らせをいたします!

本当に、本当に、ありがとうございました!

田久保眞紀

自分はメディアにいじめられている「被害者」

取材に対応しなかった理由として、「自宅の周辺にマスコミが押し寄せた為、選挙後のコメントを取りやめざるを得ませんでした」と述べている。しかし、地元局・テレビ静岡が「田久保前市長は報道陣の前には姿を現さず、陣営関係者によりますと『きょうは行きたくない』と話していたという」と報じた

これに対し田久保氏は、この報道の直後、「そのようなコメントはしておりません」とした上で、「昨夜は深夜に渡って大勢の報道が自宅付近に詰めかけた為、取材をお断りしました」(原文ママ)とXにポストし、テレビ静岡から「今後の選挙等に関する取材はお受けすることはできません」と述べた。

選挙結果を分析するよりも前に、こうした田久保氏のSNSでのコメントに注目するのはなぜか。まさにここに、彼女の、そして、今回の半年以上にわたる「田久保劇場」の理由が込められているからである。それは「被害者意識」である。

田久保氏のなかでは、落選後にコメントをしない、のではない。あくまでも「マスコミが押し寄せた為」、つまり、マスコミのせい、マスコミが悪いのであって、不可抗力というか、仕方がない。いや、それ以上に、自分はメディアにいじめられている「被害者」だ、そんな意識を貫いていたのではないか。