日本の医療・介護費が膨れ上がっている。額にして年間55兆円。GDPの1割を占め、自動車産業にも匹敵する規模だ。このままでいいのか。『日本国・不安の研究 「医療・介護産業」のタブーに斬りこむ!』(PHP研究所)を出した作家の猪瀬直樹氏に聞いた——。(前編/全2回)
撮影=プレジデントオンライン編集部

年間55兆円、膨れ上がる医療・介護費

——日本国・不安の研究』では、医療・介護費が膨れ上がる構造に着目しました。日本が抱える医療や介護の課題に目に向けたいきさつを教えてください。

2017年度の国民医療費は43兆円、介護費は12兆円にのぼっています。医療・介護費だけで、日本のGDP550兆円の1割を占めている。経済規模だけで言えば、自動車産業と同等です。

さらに、われわれ団塊世代が後期高齢者になる2025年には、医療・介護費は48兆円、15兆円になると考えられている。

にもかかわらず、医療・介護費は、税や保険、補助金などで賄われているから、市場のチェック機能が働かない。なぜそんなに金がかかっているのかも分かりにくい。そんな不透明な医療・介護業界に、人生100年時代の後半部分をまかせているんです。国民が不安を抱くのもムリはない。

もう忘れられていますが、私たちが先頭に立って、東京オリンピックを招致した理由も、そこなんです。都民だけでなく、国民みんながスポーツに親しんで健康寿命を延ばし、医療費を抑えたい、と。

スポーツに親しめば、健康を維持できるということは、私が身をもって証明しています。実は9年間、毎月必ず50キロ以上走っているんですよ。昨年の大晦日みそかも、ノルマの50キロまで少し足りなくて、夕方に3キロ走ったんだから。ヒマを見つけては走ってスマホに記録するのが日課になっているんです。