人間ドッグで判明した血糖値の異常

——なにかきっかけがあったんですか?

知り合いの医者に勧められて60歳から人間ドックを受診しはじめたんだけど、9年前の64歳のときに、血糖値が少し高いと指摘されました。医者に「このまま運動もせず、食って飲んでいると、そのうち(糖尿病になって)失明するぞ」と脅された。

目が見えなくなって原稿が書けなくなっては困るし、いままで通りに食事もしたい。タバコも吸いたい。だったら、運動してみるか、と走りはじめました。

中学時代の運動会以来に走ったけど、実際に続けてみると、糖尿の数値が平常に戻った。そして1年半後、一念発起して東京マラソンに出てみたら完走できました。

——42.195キロのフルマラソン……。

もちろん、フルマラソンですよ。東京マラソンなんだから(苦笑)。

撮影=プレジデントオンライン編集部

——還暦を過ぎてからマラソン初挑戦。しかも、完走したということですね。

タバコを吸っている私でも6時間半で走りきったからね。マラソンには、心臓や肺よりも筋力が重要なのかもしれない。東京マラソンは、約5キロごとにチェックポイントがあるんですよ。制限時間をオーバーすると足きりされ、はとバスに乗せられる。

当時、私は副都知事だったでしょう。みんなが見ている前で、はとバスに収容されるわけにはいかない。もしも棄権したら都の職員に「猪瀬は口ばっかりだ」と陰口をたたかれるのに決まっているんだから、本当に大変でしたよ(笑)。

「人生100年時代」を不安なく過ごすためには

——医療・介護費の削減案はご自身の実感から生まれているんですね。

健康寿命が延びて、70歳、75歳になってもみんなが元気に働ければ、いまほど医療費・介護費もかからなくなるだけでなく、税収も見込める。生きがいをもって元気に働く高齢者が納税者になってくれるかもしれない。そこが、人生100年時代を迎える少子高齢社会で大切なポイントなんです。

1960年の一般的なサラリーマンは55歳で定年でした。そのころの平均寿命は、男性が65歳で、女性が70歳。それから60年が過ぎたいま、平均寿命は男性で81歳に、女性で87歳に延びた。

本来、平均寿命が十数年も長くなっているのだから定年も同じくらい延びないと辻褄つじつまが合わない。だけど、1980年ころから定年は5年延長された60歳のまま。そこで、定年後の二十数年間はどうするのか……という不安が生まれる。