大きな病院の門前には、同じような店構えの調剤薬局が並ぶ。なぜこうした風景が生まれたのか。『日本国・不安の研究 「医療・介護産業」のタブーに斬りこむ!』(PHP研究所)を出した作家の猪瀬直樹氏は「調剤薬局の青年がフェラーリを乗り回しているという話が取材の端緒だった」という――。(後編/全2回)
撮影=プレジデントオンライン編集部

年間8兆円、薬局調剤医療費の不思議な仕組み

——日本国・不安の研究』では、調剤薬局を切り口に、薬局調剤医療費(年間8兆円)の問題点を指摘しています。

国民医療費43兆円のうち、医科診療医療費が31兆円を占めています。8兆円の薬局調剤医療費はあまり目立たないのですが、きちんと精査する必要があります。厚生労働省が場当たり的に「医薬分業」を進めた結果、薬局調剤医療費……とくに1兆9000億円の調剤技術料をわれわれが負担しなければならなくなった。

——医師が薬の処方を、薬剤師が調剤を分担する「医薬分業」については明治期にさかのぼって解説していますね。

そもそも「医薬分業」自体は悪いことではないんです。欧米の先進国でも当たり前に行われています。日本では明治時代から「医薬分業」の必要性は訴えられていたものの、医師が収入源だった調剤権を手放さなかったために「医薬分業」が定着しなかった。

昔は医師が仕入れた薬を倍くらいの値段で、大量に処方していた。もちろん「薬漬け」「過剰投与」と批判された。医師だけが儲かる仕組みに対して、「それじゃまずいだろう」と厚生労働省は「医薬分業」へと舵を切った。

その結果、昔は当たり前だった病院内での処方が減りました。そして患者みんなが病院の外に並ぶ「門前薬局」で薬をもらうようになった。現在、病院内での処方は3割。残りの7割が病院外の薬局の処方されている。