歴史上、重要な転換期に活躍したのが参謀だ。経済が低迷するいま、トップから重宝される人材になるには、何をすべきだろうか。
ここまでは主に、参謀が担うべき「役割」について語ってきた。では、そういう役割を果たす参謀には誰でもなれるのだろうか。参謀になるには、どうしたらいいのか。
一番大事なのは、歴史を知ることである。歴史を知ることは未来を知ることに繋がるからだ。実際、秋山真之は中世の瀬戸内海で活動した村上水軍について地道に研究していた。古い話だなどと考えず真剣に学び、のちに日本海海戦に活かしている。
二番めは、専門家であっても適度なアマチュア精神、つまり柔らかい頭を持つこと。それが新しい発想、斬新な試みに繋がる。旅順攻囲戦で苦戦する第三軍に口をはさみ作戦成功に導いた児玉源太郎は、「諸君は昨日の専門家だ。われわれは明日の専門家だ」と語っている。秋山真之も、古い歴史を誇るイギリス海軍ではなく、アメリカに留学して学んだから発想に柔軟性を持つことができた。
三番めは既存のルールにとらわれない精神力を養うこと。児玉も秋山も当時の軍隊の「武人らしさ」に縛られず、自由な行動ぶりを示している。
四番めは野心家ではないこと、地位にこだわらないこと。自分の知恵で大将と兵を動かし成果を挙げることに喜びを感じるのが参謀だ。児玉は総理大臣になってもおかしくない人物だったが、自分以外に参謀次長にふさわしい人材がいないと判断したとき、国のため軍のため、みずから内務大臣から降格して参謀次長を務めた。秀吉における黒田如水のごとく、あわよくば自分が天下を取ろうという野心を持った参謀もいたが、優秀な参謀はいずれも、リーダーを立てることに自分の喜びを見出している。