歴史上、重要な転換期に活躍したのが参謀だ。経済が低迷するいま、トップから重宝される人材になるには、何をすべきだろうか。

経済が停滞し、先が見えない現代。そんな混迷期に重みを増すのが参謀の存在である。ふりかえってみれば、歴史の転換期には数々の参謀が活躍している。

代表的なのが戦国時代だ。豊臣秀吉には竹中半兵衛、黒田如水(官兵衛)という、司馬遼太郎が『功名が辻』や『播磨灘物語』で描いた優秀な参謀がいた。徳川家康には天下取りに際し本多正信がいたし、毛利輝元には小早川隆景、上杉景勝には直江兼続である。

一方、参謀不在だったのが織田信長とナポレオン一世だ。天才であるがゆえに参謀を使えなかったといえる。頭脳は自分だけ、部下は手足としか考えられなかったのである。そのために、信長の頭から肝心な近衛部隊をつくることが抜け落ち、本能寺の変に遭うという信じられない失敗を犯した。ナポレオン一世もロシア侵攻で惨敗。天才型のワンマンリーダーが何もかも一人で決めると、盲点が生じるものだ。たとえ無駄だと思っても、参謀やブレーンは持つべきであろう。

幕末には明確な参謀が見当たらない。これは参謀不在というより、一人の人間がリーダーと参謀を兼ねなければならない変革期だったということである。西郷隆盛、大久保利通、勝海舟……。いずれも両方の役割を担っている。企業でたとえるならベンチャーの創業期の段階だ。

維新後、参謀が現れるのは近代軍ができてからである。日清、日露という対外戦争を戦うなかで、『坂の上の雲』に登場する秋山真之や児玉源太郎が近代軍の参謀として活躍している。

そもそも狭義の参謀とは、プロイセン時代のドイツ参謀本部が起源である。ナポレオン一世という天才に対抗するために、平凡な人間たちによる非凡な組織をつくろうとしたのが始まりだった。そこからクラウゼビッツやモルトケなど伝説的な参謀が何人も生まれている。

(小山唯史=構成 早川智哉=撮影)