この数年、新型のiPhoneは発表から10日ほどで発売されている。新型の詳細は発表まで極秘とされているが、発売日には各社からぴったりのケースが出ている。たった10日ほどで作れるとは思えない。一体どういう仕組みなのか。経営コンサルタントの竹内謙礼氏が取材した――。
写真=時事通信フォト
米アップルの新型スマートフォンで、トリプルカメラ搭載の「iPhone11 Pro Max」(東京都中央区のソフトバンク銀座)=2019年9月20日

なぜ発売前にケースを生産できるのか

9月下旬。知人の経営者と食事をしていた時のこと。

「新しいスマホを買ったんだ」

彼は内ポケットからスマホを取り出した。トリプルレンズを見てiPhone11の「Pro」だとすぐに分かった。

「256GBで12万越えだぜ」

自慢気に語る知人。iPhoneユーザーの私としては、正直、うらやましい。いや、うらやましいを通り越して憎らしいぐらいである。知人は発売直後のiPhoneをよほど見せびらかしたいのか、周囲の人たちに聞こえるような声で「やっぱり新型はいいね」と話を続けた。

「スマホケースも一緒に買い替えたんだ」
「前のケースを使えばいいじゃないか」
「ダメだよ。iPhone11 Proはトリプルレンズだからサイズが合わないんだ」

彼はそう言いながら、ケースを見せてきた。

しかし、そこでふと疑問が湧いてきた。新型のiPhoneが発表されたのが9月11日の午前2時。それから10日ほどの今日、9月22日に、すでに新しいスマホケースを利用者が手に入れている。発売前で手元に実物がなく、サイズも分からないスマホケースを、なぜ、こんなに早く市場に流通させることができるのか。

その疑問を知人にぶつけてみた。

「そんなの知らないよ」

彼はそっけなく答えると、再びiPhone11 Proを突き出してきて、私の古いiPhone7plusと何が違うのかを得々と語り始めた――。