毎月のように日本を訪れ、観光地やミシュランの星付きレストランを巡る若い中国人観光客は、一体何者なのか。中国で日本の観光をPRする「行楽ジャパン」の袁静社長は「彼らは不動産バブルで莫大な利益を得た親をもち、『お金は使わないと損』という考えで育っている」と指摘する——。
※本稿は、袁 静『中国「草食セレブ」はなぜ日本が好きか』(日本経済新聞出版社)の一部を再編集したものです。
「景気が悪いから」レクサスで辛抱する
最近、日本企業の方々からよく出るのは、こういう質問です。
「ニュースを見ると、中国経済はかつてほど順風満帆に思えない。それなのに、どうして日本に来る中国人は減らないのですか?」
たしかに工場閉鎖やリストラのニュースを中国でも見かけるようになりました。不動産価格もかつてほど天井知らずに上昇していく勢いは見られない。不良債権の話も耳にするようになった。でも、海外旅行に関しては、その影響がダイレクトに出てくるとは限りません。
だから、私はこう答えることにしています。
「中国の自動車販売台数は2019年7月まで13カ月連続で減少しているのに、日本車は絶好調なことをご存じですか? トヨタの販売台数なんて2019年7月まで17カ月連続で、前年同月の数字を上まわっているんですよ」
中国の富裕層たちも景気の減速を感じていないわけではない。でも、まだまだ余裕があるのです。だから、彼らはこう発想する。
「景気が悪いからポルシェはあきらめて、レクサスで辛抱しておくか」