20年前に500万円のマンションを買ったら、いまは10倍の5000万~6000万円にはなっている。しかも、目端のきく人は、当時2~3軒買っていますから、生活に余裕があって当然なのです。

結婚するまでは実家暮らし、相続税もなし

本稿で注目する八〇後(1980年代生まれ)や九〇後(90年代生まれ)は、こうした豊かな親から生まれた世代です。中国ではようやく最近、一人暮らしする人があらわれたぐらいで、基本的に結婚するまでは親と一緒に住む。住宅費がかからない。

一人っ子政策が1979年に始まっていますから、八〇後も九〇後も基本的に一人っ子です。だから相続争いがありません。親の家は、いずれ自分の家になる。親が2~3軒もっているなら、生前に1軒だけ贈与してもらってもいい。

中国にはいまのところ相続税や贈与税がないので、バブル時代の日本のように、望みもしない地価高騰のせいで相続税が払えず、泣く泣く先祖代々の家を手放した、なんて事態が起きません。お金持ちはずっとお金持ちのままでいられる。不動産価格は上がれば上がるほどうれしいのです。

しかも、同じ境遇の相手と結婚すれば、親世代の家は2軒、手に入る。これを人に貸してもいいし、片方だけ売れば、もう働かなくてもいいぐらいのお金が入ってくる。もし親が2~3軒ずつもっていた場合は、もっとすごいことになります。

なんらかの形で不動産バブルの恩恵を受けた人は、たとえ会社の給料が安かったとしても、資産家と呼んでいいほどお金をもっている。そもそも働く必要のない人も少なくないわけですから、給料の多寡を云々うんぬんすることに意味がない。

所得だけを日本と比較していては、プチ富裕層の豊かさが見えてこないということです。いまは不動産価格の上昇が止まったとはいえ、崩れてはいない。それが大きく崩れないかぎり、彼らの消費マインドが劇的に変化することはないでしょう。

月収20万円でも毎月東京で遊ぶOL

日本ファンのプチ富裕層の具体例を紹介しましょう。1人は不動産バブルの恩恵を受けた人です。1983年生まれ、36歳の独身女性Aさん。上海で働いていて、月収は20万円。しかし、ほぼ毎月、日本に遊びにきています。

彼女は大のシャンパン好きで、本当はフランスに通いたい。でも、なかなか長い休みがとれないため、近場の日本へやってくるようになった。

日本に何度も通ううち、日本酒の魅力にめざめます。上海のソムリエと一緒に、日本酒スクールでき酒師の資格をとったほどです。いまは東京でミシュラン星付きのレストランをまわって、日本酒や高級ワインを開けるのが趣味になった。