「発売1カ月前には手元にサンプル品があった」
さらに詳しい情報は、iPhoneを製造している海外の企業にありそうである。中華系のビジネスであれば、知人の経営者が現地に複数人いる。その中でも雑貨小物の輸入販売に詳しい知人に問い合わせてみたところ、匿名を条件に取材に応じてくれた。
「今のスマホケースの情報はダダ漏れですよ。今回のiPhone11のスマホケースも、発売の1カ月前には僕の手元にサンプル品がありましたからね」
彼が言うには、以前よりもiPhoneの発売前の情報は入りやすくなっているという。しかし、なぜ、情報統制が緩くなったのか。
「数年前まではiPhoneも売れていたから、情報に価値があったんです。でも、今は昔ほど売れていませんからね。情報を漏らすリスクも、もうかる額も減ってしまったから、情報が事前に出回りやすくなったんだと思いますよ」
iPhone販売台数の公表をやめたアップル
その話を聞いて、iPhoneの現状を調べてみることにした。
米アップル社は2018年の決算発表で、今後、iPhoneなどのハードウエア製品の販売台数の公表を取りやめることを宣言した。販売台数が頭打ちになっていることが露骨にバレてしまうことを避けたかったのだろう。事実、最後の公表となった2018年の7~9月期のiPhoneの販売台数は4688万9000台。前年同期と比較しても横ばいの数字となっている。ドイツ・スタティスタのインフォグラフィックスを見ても、iPhoneの売上高に比べて、販売台数が鈍化していることが分かる。
世界市場でのシェア率に目を向けてみると、さらに事態は深刻だ。CNET Japanの記事(「世界スマホ市場、アップルがファーウェイに抜かれ3位に転落--首位はサムスン」2019年5月7日)によると、2019年第1四半期の世界シェアは、1位サムスン、2位ファーウェイとなり、iPhoneは3位に転落している。
日本市場だけをみると、iPhoneは50%近いシェア(NTTドコモ「ケータイ社会白書2019年版」)があり、好調に売れているように見える。しかし、世界市場でみると、販売台数は鈍化しており、アップル側もそれを承知の上で、販売台数を稼ぐよりも、アプリの販売や音楽等のサブスクリプションビジネスで売上を稼ぐビジネスモデルへとシフトしているのである。
また、香港の新聞「South China Moring Post」は、iPhoneの売上減により、中国のiPhone工場で働く従業員の給与が、2018年末から大幅にカットされたと伝えている(South China Morning Post「Foxconn, a tale of slashed salaries, disappearing benefits and mass resignations as iPhone orders dry up」2019年3月1日)。
ある従業員は、2018年の10月は4000元(約6万7000円)だった給与が11月には3000元(約5万円)に減額したと語っている。シャトルバスの運行が中止になったり、今まで無料だった洗濯サービスが有料になったり、福利厚生面でも削減策が行われているという。