大震災による雇用の悪化が全国規模で拡大している。3月26日に実施した全国ユニオンの「雇用を守る震災ホットライン」に寄せられた相談件数は293件。被災地の宮城、福島県以外に東京、埼玉、神奈川、愛知、静岡県からも多数寄せられた。勤務先も製造、小売り、旅館、物流などあらゆる業種に及ぶ。
最も多いのは「休業・自宅待機」の相談だ。派遣ユニオンの関根秀一郎書記長は「会社が休業しても給料の補償がない無給休業が多い。ほとんどが非正規雇用者であり、いずれ無給休業が解雇や派遣切りにつながる危険性が極めて高い」と指摘する。
相談者の圧倒的多数を占めるのは派遣社員だ。関根書記長は「2008年のリーマンショック後に実施したホットラインのときより、今回のほうが1日あたりの相談件数が多くなっている。今も連日電話が鳴り響いており、雇用市場へのインパクトはリーマンショックのとき以上だ」と危機感を露わにする。
当時は真っ先に派遣切りが始まり、パート・契約、そして正社員の大リストラへと徐々に拡大した。09年6月までの派遣失業者は20万人に達し、7月の完全失業率は過去最高の5.7%を記録した。また、当時は金融危機後の世界的需要減による予防リストラの性格が強かったが、今回は自動車・電気部品、素材メーカーの生産拠点が一挙に操業不能に陥るなど、経済的打撃ははるかに大きい。
加えて計画停電に伴う減産や原発事故の放射能不安による輸出停滞も危惧されるなど雇用を脅かす要因が山積している。しかも、大震災前は景気が回復したといっても10年の平均失業率は5.1%。08年の4.0%を上回る高止まり状態が続いていた。リーマンショック時の失業率がピーク時にプラス1.7%も上昇したことを考えると、今後、6%超えはもちろん、7%に達してもおかしくない。
※すべて雑誌掲載当時