なぜレイプ事件の多くが不起訴になってしまうのか。弁護士の伊藤和子さんは「加害男性を警察が逮捕しても、検察が『強制性交にも、準強制性交にもあてはまらない』として釈放するケースが多い」という。「被害実例」と併せて、その不条理を検証する——。

※本稿は、伊藤和子『なぜ、それが無罪なのか!? 性被害を軽視する日本の司法』(ディスカヴァー携書)の一部を再編集したものです。

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スポーツクラブで出会ったオジサンが豹変する

2017年のある日の未明、19歳の未成年女性がその前夜に初めて会ったばかりの男性から無理やり性交される被害にあいました。

彼女、E子さんは専門学校生。お母さんと一緒に近所のスポーツクラブに入ったばかりで、その日はお母さんと一緒ではなく、一人でスポーツクラブに訪れた初めての日でした。

はにかみやで戸惑っていた彼女に気さくなおじさんが声をかけ、器具の使い方などを教えてくれました。夜の9時にトレーニングを終えて外に出ると、そのおじさんがニコニコとスポーツクラブの出入口に立っていて「飲みに行かない?」と誘います。

同年代の彼氏と交際していた彼女にとって、年の離れたおじさんはもちろんデートの対象ではありません。でも、せっかく入ったスポーツクラブで声をかけてくれたおじさんと打ち解けておいたほうがいいかな、と彼女は思い、近くの飲み屋に自転車をひいて一緒に行きます。

他愛ないと思われた近所のおじさんとの交流、それがすぐに性暴力被害に暗転します。