「動画はやめてください」と訴えても撮影をやめない男

一軒目で飲んでいる最中に彼女はかなり酔いが回ってしまいます。ふらふらしていたので、早く家に帰ろうとする彼女を、男は強引に二軒目のバーに連れて行きました。

二軒目に入った頃には彼女は気分が悪く、眠くなってしまい、テーブルに顔を突っ伏して寝ていたり、トイレに入ったり、彼女はその店で何をしていたか、ほとんど記憶がありません。

その晩、彼女はあわせて6杯も飲酒して、酩酊状態にあったのです。

店の人が心配してタクシーを呼んでくれ、「タクシーが来たよ」という声が聞こえた後、彼女の記憶はなくなります。泥酔状態のままタクシーに乗せられ、運び込まれた場所は、自宅ではなく、おじさん=男の家でした。

タクシーから降りたところで意識を取り戻した彼女は、男の家についてからもしばらく、酔った自分を見かねて連れてきてくれたのか、と思っていました。トイレに行った後、足元がふらふらしたまま男のいる部屋になだれ込んだところ、男は変貌します。彼女は衣服を脱がされて裸にされ、裸の姿を動画で撮影されたのです。

まさか自分に性行為をするなどと思っていなかった、きさくなおじさんが加害者になる、その事態に彼女は精神的に著しく混乱し、恐怖を感じます。そして、裸の動画をばらまかれるのではないか、そうなったらどうしよう、と羞恥心でいっぱいになります。

「動画はやめてください」と訴えても男は撮影をやめません。彼女は顔を髪の毛で隠し、体を後ろに向けて、動画を撮られないように精一杯自分を守ろうとしていると、男が自分に体を密着させて性交しようとしてきます。

「うるせえ、殺すぞ」と脅され、無理やり性交された

伊藤和子『なぜ、それが無罪なのか!? 性被害を軽視する日本の司法』(ディスカヴァー携書)

彼女は自分のできる範囲で、手を使って男の体が近づいてこないように押さえようとするなど、抵抗を試みましたが、力の差もあり、まだ酩酊して体に力が入らないこともあり、手はすぐに払いのけられてしまいました。

こうして彼女は男に無理やり性交されてしまったのです。ひどい話だと思いませんか。

彼女は性交されている間、悔しくて悲しくて、泣き叫んで抵抗しようとしました。しかし、男は「うるせえ、殺すぞ」と脅し、毛布を顔の上からかぶせ、彼女は「本当に殺される」と著しい恐怖心を感じました。抵抗できなくなった彼女はその後も性交されたのです。