不起訴になった場合、被害者にできることは何か

不起訴になってしまった場合も、まだ被害者にはできることが残されています。

日本には検察審査会という制度があり、国民から選ばれた検察審査委員たちがもう一度事件について検討し、不起訴という判断が正当だったのかを審査する手続きがあります。

検察審査会は、衆議院議員の選挙権を有する国民のなかからクジで選ばれた11人の検察審査員によって構成され、検察官が下した不起訴処分の当否を審査する、とされています。

性犯罪の事件についても、不起訴処分に納得のいかない場合は検察審査会に申立てを行い、不起訴が正しかったのか審査をしてもらうことができます。

審査には、記録の検討だけでなく証人尋問も含まれる場合があるとされています。

検察審査会では、審査の結果、不起訴相当(不起訴処分は相当であるという議決)、不起訴不当(不起訴処分は不相当であり再度しっかり捜査すべきという議決)、起訴相当(起訴するのが相当であるという議決)のいずれかの議決をします。

女性が検察審査会に申立てることを躊躇した理由

不起訴不当、起訴相当という判断が出た場合には、検察官は事件を再捜査、再検討することになりますが、起訴するか否かを最終的に決定するのは検察官となります。しかし、2009年の制度改正で、「起訴相当」という議決が2回出たケースについては必ず起訴するという「強制起訴」の制度が導入されました。ただし、「起訴相当」になるケースそのものが少なく、強制起訴になる事件は今もごく少数にとどまっています。

私は、E子さんに検察審査会への申立てを勧めてみました。しかし彼女は「検察審査会でもいい結論が出なかったら、自分の心のなかがどんな状態になるのか、とても心配」と言って、検察審査会に申立てることを躊躇しました。

性暴力被害にあった若い女性はただでさえ、対人恐怖症やPTSDなど困難を抱えています。「不起訴が不服なら検察審査会に申立てればいい」と言われるけれど、それがかえって被害者の心を傷つけることもあり、とても酷な言い分です。このような状況で、被害にあった人が希望の持てるシステムを、私たちの社会はもっていると言えるでしょうか。