性交を強要する行為が罪にも問われないのは明らかに不当
一方で、検察官は、彼女の抵抗が弱かったことから、加害者の行為は強制性交等罪の「暴行」にあたらないと判断しました。
彼女は、「うるせえ、殺すぞ」と脅され、毛布を頭からかぶせられてとても怖かったと訴えています。一方で、加害者はそのようなことをしたことを否定、密室で起きた出来事であるため、そのような行動があったと立証はできない、という結論になったのです。
しかし、飲酒酩酊させて泥酔状態にして未成年の女性を無力で抵抗できない状態に陥れたうえで、裸の動画を撮影して抵抗を著しく困難とさせて、性交を強要する行為が何の罪にも問われないというのは明らかに不当ではないでしょうか。
特に、性的な動画の撮影・拡散はとても深刻な社会問題になっており、ひとたびインターネットに拡散した性的な動画はほぼ永久に消去できないとして、女性たちを恐怖に陥れています。そんな手段を使って女性を精神的に追い詰めて無理やり性交をするという、事の深刻さ・悪質さを検察庁が正しく理解しているとは到底思えません。
レイプが認められるためには抵抗しなければよかったのか
それでは、本件でレイプが認められるために、彼女はどうすればよかったのか。ささやかな抵抗をしたために「抗拒不能」と認められないのだとすれば、抵抗しなければよかったということでしょうか。
法が被害者にそのようなことを要求するのは、とても残酷な話だと思います。逆に、彼女が抵抗していなければ、「同意があった」「同意があったと誤解した」とされてやはり無罪・不起訴とされていたかもしれません。
一体彼女がどうすれば、この事件でレイプが認められたというのでしょう。
意に反して性交されていることが明らかなのに、強制性交等罪の「暴行」「脅迫」、準強制性交等罪の「抗拒不能」がどれも認められず、罪に問えないとすれば、あまりに不合理ではないでしょうか。