交際相手の彼氏に電話すると、男が「撮影した動画をばらまくぞ」
性交が終わると彼女は部屋から脱出を試みますが、家を出ようとすると男もついてきました。家の外に出てからも男はなかなか彼女のもとを立ち去りません。彼女は、交際相手に「助けて」「ごめん」などとラインでメッセージを送ります。
しばらくして男がようやく離れたので、彼女は交際相手の彼氏に電話をかけて泣きじゃくりました。すると、彼女の様子を監視していた男が再び現れ、「誰に電話かけてるの?」などと問い詰めだし、彼女と口論になり、「撮影した動画をばらまくぞ」などと脅したのです。
口論になっている最中の様子を彼氏は電話口で聞いており、近くに住む友人に現場に駆けつけてもらい、ようやく男は諦めて彼女の元を去りました。
検察官「『性行為をやめてください』とは言っていないね」
彼女はこの日の朝には自宅に戻って母親に事情を説明、その日のうちに警察に被害届を提出し、病院で検査も受けました。
警察はほどなく男を逮捕、彼女は、当然犯人が起訴されるはずだと思っていました。
警察での事情聴取を終え、今度は検察官から事情聴取を受ける日がきて、彼女は検察庁に行きます。すると検事は逮捕された容疑者が撮影した動画を見ながら、「動画を見ると、君は『動画を撮るのをやめてください』とは言っているけれど、性行為をやめてください」とは言っていないね」と彼女に言ったというのです。
そして、事情聴取をろくにしないまま「もうすぐ容疑者を釈放するから。この事件は起訴できない」と言ったのです。彼女はあまりのことにショックを受けました。
こうして私はE子さんから相談を受け、事件に代理人として関与することになりました。
「どうしてそんなに簡単に不起訴にできるの?」私は強く憤りを感じました。
早速、検察官に会いに行き、何度も説明を求めたり意見書の提出をしたり、再捜査も要請しました。検察官はこれに応じて再捜査も行ったとしています。しかし、最終的な結論はやはり不起訴だったのです。
検察官から説明を受けて、E子さんは検察庁で悔し涙を流しました。彼女の涙は止まらずに流れ続け、彼女の傷つけられた心のなかでは血が流れているように私は感じました。
彼女は、事件後スポーツクラブもやめ、専門学校もやめました。PTSD症状から対人関係も難しく、就職ができずにいます。