台本を完璧に用意して俳優のように演じる

イーオン社長の三宅義和氏

【三宅】短期間で英語力を呼び戻すために、具体的にどんな勉強をされているのですか?

【西内】僕はいつも完璧な台本を作ることから始めます。海外転勤や外資系に転職するといった次元の話であれば英語力全体を底上げしないといけません。でも、決まったテーマで授業をするとか、特定の人と会って親睦を深めるといったように目的が明確なときは、自分用の台本を書くのが一番効率的だと思っています。

例えばコトラーさんに久しぶりに会うということは近況報告が中心になるわけですから、「統計学の本を書いたら想像以上に売れて驚いている」とか、「こんな切り口の本なのだけどさ」のような話になると予想できますよね。あらかじめ文章として書いてしまうのです。話の流れもきちんと決めて。10分間会話するのであれば、最低でも10分間しゃべり続けても困らないだけの文量を。

一通り書いたら自分より英語力がある人に直してもらいます。あとはひたすら練習です。発音はもちろん、強弱、間、表情、しぐさも含めて。

【三宅】そこまでされるのですか!

万全の準備が圧倒的な心の余裕を生み出す

【西内】自分がしゃべっている姿を動画で撮ったりもします。しゃべりに夢中になると変に手が泳いだり、妙にモジモジしたりすることがあるので、そういうことも完璧に直して挑みます。

【三宅】まるで俳優のようですね。ただ、実際はその通りの展開にはならないですよね。

【西内】もちろんです。だからイメージとしては起業家が投資家にビジネスアイデアを短時間で説明する「エレベーターピッチ」に近いものがあります。台本通りに展開するとは限らないですが、想定質問を含めて各パーツは完成されているので、ある程度話題を誘導しながら会話を展開していけばかなりスムーズに会話することができます。

あとは、万全の準備をしているので圧倒的に心に余裕が持てます。そのメリットもかなり大きいと感じます。京大の授業のあとも留学生のみなさんとフリーディスカッションになりましたが、授業を徹底的に準備していることで、なぜか授業内容と全然関係ない質問がきても流ちょうな受け答えができるんですよね。